けんざ

マイ・フェア・レディのけんざのレビュー・感想・評価

マイ・フェア・レディ(1964年製作の映画)
3.0
人間の価値が、自己研鑽のフィードバックとして得られるものなのか、それとも他者からの評価によって保証されるものなのか、と考えさせられる。

傲慢なミソジニストのヒギンズは、女性の価値観を自分の人生に持ち込ませず、自己中心的な世界で生きてきた。一方、花売りの娘として粗末に扱われてきたイライザは、手に入れられるモノではなく承認欲求に飢えていた。この対照的な2人の出会いが、同じ時間を過ごす内に互いの価値観を大きく変容させていく。

「黙っていれば美人」とはよく言ったもので、銀幕の妖精オードリー•ヘップバーンですら、未熟な発音と下品な抑揚を使うときは魅力が半減している。どんな金持ちであっても、言葉遣いと食事マナーは育ちが出るから正体がすぐにバレるし、この人は立派なハリボテで貧しい出自を取り繕っているんだな、と哀れみを覚えることすらある。

イライザが去り、彼女の口汚い音声をレコードで流しているヒギンズのシーンが物悲しい。正しい評価で自信をつけたイライザにとって、偏見も差別も恐るるに足らなくなったのだ。彼女はヒギンズを孤独の世界に追いやることで、誰にも認められない寂しさを突きつけてやったのだろう。立派な自己評価などあってないに等しいものだと。

構成について言及すると、ミュージカル原作なので上映時間が長く曲パートも非常に多い。正直あんな要らない。次の展開にテンポよくいきたいところで歌が挟まるとイライラする。単に自分がミュージカル映画向いてないだけなのかな。
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