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市民ケーンのbennoのレビュー・感想・評価

市民ケーン(1941年製作の映画)
3.9
『ヴィジョンズ・オブ・ライト』で紹介され…ずっと観たかった作品…監督、脚本、主演はオーソン・ウェルズ…撮影監督グレッグ・トーランドの見事なまでの撮影技法の妙…。


霧の中に溶け込む朧げに聳え立つお屋敷…ザナドゥという未完のお城…。

男の口元から発せられた最期の言葉は…

『ローズバッド(バラのつぼみ)』…

新聞王の名を馳せたそのお屋敷の主チャールズ・ケーン…手からこぼれ落ちたスノーグローブが季節を物語ります…。

始まりはミステリアス…彼に近しい人物のインタビューを基に過去の映像から謎の言葉の意味を紐解きます…。

モノクロの陰影美は言うまでもなく…被写体の奥で行われている細かく丁寧な演出に感嘆…観ている側を惹きつけるストーリーの構成も素晴らしいのですが…意外と早い段階で謎がわかっちゃうのは…ご愛嬌…。

1番好きなのはケーンが州知事に立候補した際の演説シーン…ダイナミックな映像に負けず劣らずオーソン・ウェルズの演技が光ります…まさにAmerican Speech!! 相手をこれでもかと蹴落とす迫力と顔の表情が天晴れ…そして彼の声はとても魅力的…声フェチとしてはポイントアップ…。


  〜〜〜⚠︎以下ネタバレ含みます⚠︎〜〜〜










25歳で新聞社を譲渡され…そこから70歳まで…大恐慌で力を失い、不倫スキャンダルで選挙に敗北…波乱の孤独な人生を描きます…。

幼い頃から物を与えられて育ってきた彼の愛情の表現はこれしかなかったのでしょうか…?? 第2夫人スーザンとの別れ際はとても印象的です…。



“Don’t go,Susan! You mustn’t go! You, you can’t do this to me, Susan!

  行かないでくれ、スーザン!! 私を傷つけるな!!

ー”I see… it’s you that this being done to!! It’s not me at all.”

ー やはりね…結局自分なのね…
私の気持ちなんて考えてない…。



ドアを使った遠近法でスーザンが去っていく後ろ姿も美しい…結局自分しか愛せない男の末路…。

冒頭のNo Trespassing (立ち入り禁止)の看板が独りよがりのケーンの心を象徴しているようにも思えます…。

そして"ローズバッド"とは…??


『Mank / マンク』も是非観てみたい…ෆ*
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