安堵霊タラコフスキー

果てなき船路の安堵霊タラコフスキーのレビュー・感想・評価

果てなき船路(1940年製作の映画)
4.8
1940年に撮られたジョン・フォードの作品と言えばアカデミー賞を受賞した怒りの葡萄があるが、同じ年に撮られたこの作品もその代表作に負けず劣らずの力作となっていた

この作品は過酷な環境で生きる船乗りたちの生き様を描いたプロレタリア文学的代物になっていて、ここではドラマ性より彼らの船上での生活風景に重点が置かれて、それがまず素晴らしい

悪天候のシーンが多いためかほとんどがセット内での撮影が大半となっているけど、にもかかわらず海の風景映像との合成が自然だったり波飛沫やカメラの傾け加減が絶妙なおかげで海の上で本当に撮影しているかのように自然な具合になっていたのには舌を巻いた

時折霧がかかったようにも見える陰影のつけ方もいつも以上に絶妙で、さながらエイゼンシュテインやドブジェンコらロシアの名作サイレント映画の如く味わいを生んでて、この情感のある絵作りも流石ジョン・フォードと言わざるを得ない出来

他にも戦闘機を映さず音や攻撃の演出だけでその存在感を表す様等細かい部分でもジョン・フォードの卓越ぶりがわかる作品になっていて、こういう表現に重きを置いたものを見ると良い映画に出会ったなと思えて気持ちが良くなる