むーしゅ

ロンドン・ブルバード -LAST BODYGUARD-のむーしゅのレビュー・感想・評価

2.8
 アイルランドの小説家Ken Bruenの"London Boulevard"を映画化した作品。ブルバードとカタカナで書かれると何のことだかわかりませんが、Boulevardとは"大通り"という意味。つまり「ロンドン大通り」というタイトルですね。なぜ邦題をカタカナ表記にしたのかは謎ですが、原作小説と同じタイトルにしたかったのでしょうか。

 刑期を終えて出所したミッチェルは裏社会から足を洗うために、元女優シャーロットのボディガードの仕事を引き受ける。しかしギャングのボスであるロブは、ミッチェルを仲間に入れるために説得を開始。それに対して彼らを侮辱したミッチェルは、逆に命を狙われ始めるが・・・という話。とりあえずパパラッチが家の周囲に常に張り付いているほどの人気女優が、前科持ちをあっさりボディーガードに雇ってしまうことについてはスルーするとしておいた方が良さそうです。

 さてこの映画はタイトル"London Boulevard"を見て、あれそんな通りの名前あったかな?と思ってしまいますが、日本語に直すと何となくわかってくる通り「サンセット大通り」のオマージュですね。豪邸で女優と庶民が恋愛をしつつ光と影をテーマにしており、まさに「サンセット大通り」。そしてフィルム・ノアールだと言える映画の作り方も含めて寄せてきています。そこまで理解すると言いたくなるが、なぜこうなった?ということです。これだけ作りたい方向性が明確であるにも関わらず、映画全体を包み込むダラダラ感。別にサスペンスとしてスピード感を出してほしいと言うつもりはないのですが、なんとまぁはっきりしない映画なんだろうという雰囲気を始終持ち続けています。「サンセット大通り」に影響受けている時点で、女優シャーロットの栄光と現在、前科持ちミッチェルの表社会と裏社会を描いていくという大枠の方向性が見えているのに、肩透かしのようにスルスルと避けて進みます。おまけにギャング側は妙にバイオレンスで、激しくドンパチしてくれるので正直お腹いっぱい。闇は滲み出ているくらいが一番かっこいいので、ここまでやられると製作者側が少し面白がってやっているのかと思ってしまいます。何だかもはや期待したこちらが悪かったかのような気すらするくらい方向性の違いを感じました。

 そんな映画ですが、良かったことといえばColin Farrellですかね。しかしColin Farrellの演技が良かったというわけではなく、Colin Farrellのスーツ姿が良かったです。とにかく滅茶苦茶似合っていて無駄にかっこよすぎる、ただそれだけです。まぁでも身にまとうオーラも実力のうちですね。Colin Farrellのファンであればそれ目当てに見ても良いとは思いますが、そうでなければスルーかもしれないですね。その他良かった点は音楽のチョイスでしょうか。いきなり"Heart full of soul"がかかるオープニングが魅力的ですが、冷静になればこの曲は60年代の曲ですし、どの世代向けに選んだのかわからない懐かしめの曲が続きます。これは監督William Monahanの趣味の世界なのでしょうか。曲選は良いのですが、作品とあっているかというと何とも言えないアンバランスさも感じます。

 William Monahanは「ディパーテッド」の脚本家として知られ本作が監督デビュー作ですが、撮り方や構成は申し分が無い一方で軸がない印象を残す作品でした。出演者は豪華だったりするので、誰か好きな役者が出演していて作品一気見している人は見ればよいという映画です。
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