にょこ

BIUTIFUL ビューティフルのにょこのネタバレレビュー・内容・結末

BIUTIFUL ビューティフル(2010年製作の映画)
4.1

このレビューはネタバレを含みます

久々にダメージをくらうレベルの重たい映画でした。
冒頭のシーンとラストのシーン。同じなのに全く違う感情で見ることができる、凄い映画だと思う。最初は取引かなんかに失敗して死亡フラグかと思った…

ハビエルバルデムの演技もあって2時間半という長さで体力も使うんだけど、しっかり見れました。
もう一回観たいんだけど…天井が怖いんだ…

余命宣告されたどん詰まり主人公が、ひたすらに間違った選択をしてしまうんですが、それでも子供に少しでも何かを残すために必死に生きるウスバル。
黒澤監督の『生きる』のオマージュがあると言うけど、苛酷な状況の為か感動すると言うか…ひたすらに痛々しい。

ウスバルの生い立ちからも考えられるように、beautifulの綴りすら間違えてしまう、学のないウスバルはずっと非合法な社会で生きてきたんでしょう。だから子供にできることって本当に少ない。
彼の1番辛いところはそんな世界で生きながらも優しいところです。そこがまた間違えるきっかけになってる。

スペイン・バルセロナの都会の中の貧困や移民問題といった、辛い現実の中で生きている唯一の光ともいえる2人の子供達。
ウスバルの愛とできうる限りの教育を受けて育っているのがわかります。
食べ方を注意したり、宿題見ながら髪の毛結んであげたり。
親の顔色を伺える優しい姉アナとは違い、怒られたり不安な日にはオネショしてしまうマテオを理解し抱きしめる。

イニャリトゥ監督らしさと言うのか、、主人公の霊能力っていうのが不思議でした。
天井の蛾や窓を這い蹲る蟻。テレビでの打ち上げられるクジラ。それに合わせたかのように後に出てくる中国人の死体。
抽象的な映像もまた不思議で考察の楽しい映画ですね。

光が見えない中で迎えるラストには感動。
アナはやっぱり父の最期に気付いてしまうんですね。
ラストの父が自分の父の事を語るシーン。
ウスバルも心のどこかで父を求めていたんでしょうか。
そう思うとラストは少しだけ、本当に少しだけ救われます。
間違った綴りでも発音の通りBiutifulに生きた男の、父と子の話でした。
にょこ

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