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ニューヨーク・ニューヨークのおぼっとのレビュー・感想・評価

5.0
観てる方が少ないだけに、平均スコアもあてにならないんですかね?
自分は、5です。
ただ、ジャズやジャズの歴史を知らないと感情移入出来ないかも知れません。
ララランドの延長や予備として観る方も多いであろう、作品。
ベースラインは同じかもしれませんが、全く別物として分けたほうがいいです。

第二次世界大戦の終戦に沸くニューヨーク。
盛り上がる酒場で、ジミーのしつこい口説きに会うフランシーヌ。
流れる音楽はスウィング。
スウィングジャズは、30-40年代のジャズを代表するジャンルです。
スウィング=踊るジャズ、複数編成のジャズ。
演奏のもと、スウィング=跳ねて踊るジャズが観て取れます。
複数編成のジャズですので、トップの人が指揮を執り楽団=オーケストラとして各酒場を転々として演奏するスタイルです。ビッグバンドとも言われますね。スウィングガールズも、スウィングジャズの名曲を演奏してます。
スウィングの楽団といえば、
ベニーグッドマン楽団(代表曲:Sing Sing Sing)、カウントベイシー楽団(代表曲:One O'clock Jump)、デュークエリントン楽団(代表曲:Caravan セッションのCaravanの原曲)、グレンミラー楽団(代表曲:In The Mood)などが有名どころですね。

ひょんなことから、ジミーのオーディションに付き合うフランシーヌ。
オーディションでは、サックスを自由に鳴らすもオーナーに却下され、激高するジミー。そんなジミーにアドバイスし歌い上げセッションするフランシーヌ。このシーン、重要です。
ジミーは天才なんです。スウィング全盛の時代に、すでにモダン(バップ)を吹いてるんですよ?人間的には、自己中心、自分が演じる音楽が一番だと思ってます。
フランシーヌは、有名楽団のボーカルとしてマネージャーも付いているこちらも天才。

ジミーはフランシーヌの所属する楽団に、オーディションで受かり帯同しますが、楽団のリーダーは、その即興性に頭を悩める。しかし、天才なのは認めています。時代がジミーに追いついていないんですよ。
やがて、ジミーの無理やりな求婚により、フランシーヌと結婚しますが…
ジミーとフランシーヌは、お互いの才能に結婚したんでしょうね。特にジミーは、彼女の歌声を尊敬しつつ、嫉妬も同時に。
ジミーがトップになった楽団。フランシーヌと才能のバトルで全然上手く行きません。天才と天才がぶつかればそうなります。
フランシーヌの妊娠をきっかけに、ジミーも楽団を手放しフランシーヌのいるNYへ帰ります。これが、二人が別れる羽目になります。

妊娠中のフランシーヌは、レコーディングで金稼ぎ。
ジミーは楽団を手放したことに次の目標が持てず、友人の酒場に誘われて行くと、そこはスウィングが廃れすでにモダンジャズ。

モダンジャズというジャンルこそ、ジャズという方は少なくありません。
ジャズは即興音楽である、と定義する意見も多数です。(タモさんも)
チャーリーパーカーが礎を築き、マイルスが確立したとも言われてます。
スウィングとの違いは、
・少数編成
・スコア(楽譜)がほぼない。(編曲も最小にして、あくまでソロ重視)楽譜が読めないジャズメンは多いそうです。
・スウィング=踊るに対して、モダン=聴かせる(レコーディングの発達)
・お互いの感覚でソロに回ったり、ベースに回ったり感性が大事。

時代がジミーに追いついたんですね。
友人とのセッションに彼は、自分の居場所を見つけたんでしょう。
そんなジミーとフランシーヌに決定的な別れのシーンが。

ジミーが演じる酒場で、フランシーヌのレコーディング契約。
ジミーは、自分の妻がスターになっていく事を、喜びながらも自分が一番でいたいというプライドから、素直に喜べない。
フランシーヌは身重ながら祝杯を一人で上げ、夫の演奏を見て、テンション上がったのか、夫がセッションしてる途中にそっち行っていい?とサインします。
しかし、ジミーはそれを遮るかのようにソロを始めます。
凄くいいシーンです!
「俺がソロなのに来んなや!」そう言ってますね。
ジミーがモダンに活路を見出し、活き活きと演奏してるところに、いずれメジャーになるフランシーヌに上がってきてもらっては、自分のソロが台無しになると考えたんでしょう。

その後、喧嘩、出産後お互いの「音楽の方向性」で別れてしまいます。
時は経ち、ハリウッドの大女優までになったフランシーヌと、モダンを愛しジャズバーのオーナー、チャーリーパーカーを上回るランクにまで評価されるジミー。
ラスト30分からのミュージカルシーンと、フランシーヌのニューヨーク・ニューヨークは圧巻です!!
シナトラがカバーして有名になったって言いますが、全然ライザの方がいいですね!
ラストも、フランシーヌを誘うジミーですが、自分が待つというプライドが許さないのか、足早に立ち去るという笑
モダン気質の人間は、ジミーみたいな人間ばかりです。

ある一人のミュージシャンの記事がありましたけど、
「ミュージシャンというのは、一部の人間は違うかもしれないけど基本的に社会的不適合者で、一般の会社など勤められない。
勤められるなら、勤めてるし出来ないから音楽しかないんだ」と。
ジミーは間違いなく、そういう人間であり、天才であると。
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