威張り散らかす男らからの抑圧と古い家具やノブに潜むような諦観が染み付いた女たち。無力な子どもでいても地獄、結婚して家を出てもまた然り。そんな陰鬱な生活の中で、めかしこんでお酒を片手にするハレの日の点と点にたゆたう合唱の弾みと間奏の賛美歌の調べが、断片たちを繋いで形を持った叙情を浮かび上がらせる。
母親が半身を外に乗り出して窓を拭く姿を幼い子供達がそれぞれ見守るシーンの危うさが恐ろしく素晴らしい。そこから流れる、やっちまった恋の曲の虚しさ。くすんだ家の象徴たる階段にヌッと現れる電気消しおじさんのアクセントも禍々しくて好き。