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野性の証明のodyssのレビュー・感想・評価

野性の証明(1978年製作の映画)
2.0
【ダメなのは原作起因か】

高倉健と、十代前半の薬師丸ひろ子(これが映画初出演)が組んで出演というので割りに有名な映画ですが、どういうわけか見る機会がなくて、最近ようやくBS録画にて鑑賞。

でも、うーむ・・・な内容ですよね。

最初はいい。
自衛隊の特殊部隊が、テロリストのもたらした危機に対応して出動、見事に仕事をなしとげるという設定ですから。

この映画は1978年に作られていますが、映画の時代設定は1980年が最初です。つまり近未来ということになる。

連合赤軍による浅間山荘事件が起こったのは1972年。日本航空ダッカ・ハイジャック事件が起こったのが1977年。

後者の事件に際して、当時の福田赳夫首相は乗客の命を重視してハイジャック犯人の要求をのみ、刑務所に収監されていた極左のテロリストを釈放しました。

しかし、同じ年にドイツのルフトハンザ機ハイジャック事件が起こったとき、西ドイツ政府は正反対の対応をとったのです。西ドイツは犯人の要求をのまず、夜に特殊部隊を機内に忍び込ませて、銃撃戦によって乗っ取り犯人を射殺しました。念のため付け足せば、当時の西ドイツ首相は社民党、つまり左翼政権でした。

ハイジャック事件における日本と西ドイツの対応が正反対だったことは当時大きな話題、もしくは問題となりました。その後、日本の警察でも特殊部隊が作られるようになったらしいのは、この事件によるところが大きいと言えます。

話を映画に戻します。
最初のあたりはそういう時代背景を考えながら見ていたのですが、その後の展開を見ると、何、これ、なのですよね。

いくら特殊部隊だって、あんな訓練をするわけがない。だいたい、あんなことをやって隊員の命を奪い続けたら隊員のなり手がなくなるに決まってるじゃないですか。

これ、原作(読んでませんが)通りだとすると、森村誠一の想像力の貧しさでしょうね。或いは、自衛隊なら何をやってもおかしくないという政治的な偏向の産物でしょう。

その後、話は地方都市をボス的に牛耳っている男とそれに関する色々な事件になるのですが、ここも話が極端なんですよね。例えばマスコミはこの町の地方紙しかないの? 全国紙だって地方でも読まれていますよ。1980年なんだからテレビだって報道番組が充実してきていたと思うな。
地方都市においてこういボス的な人間がいることは事実でも、次々と殺人を犯して全然表に出ないという設定はマンガチックでリアリティがありません。

自衛隊なら何をしてもおかしくないという設定と、地方都市は牛耳っているボスがやりたい放題という設定は、同じパターンですね。

繰り返しますが原作は読んでません。でも原作通りなら、森村誠一の貧しい想像力がうかがえるとしか言いようがない。

せっかく高倉健と十代前半の薬師丸ひろ子が出ているのに、さらに中野良子、松方弘樹、三國連太郎、丹波哲郎といった役者が揃っているのに、それを活かすことができなかった。原作の罪は重いと言わざるを得ないでしょう。
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