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ワン・フロム・ザ・ハートのpikaのレビュー・感想・評価

ワン・フロム・ザ・ハート(1982年製作の映画)
4.5
なんだこれ最高かよ!
舞台のような場面転換とクロスショットが芸術的で感動もの!めくるめく映像表現に加えて喜怒哀楽を刺激する娯楽性が隅々にまで丁寧に盛り込まれていて延々と面白く、映画の醍醐味ってものをたっぷり堪能した。
うねうねと動き回るカメラと華やかな照明テクの計算された演出が気持ち良い。
特にカメラの移動と照明によって奥行きで見せる場面転換の演出が鳥肌モノだった。楽しー!
車のオーケストラや二人きりのタンゴなどミュージカル然としたシーンの描写センスが素敵すぎ!

キャラクターの心情を歌に乗せてガンガン流し幻想世界をダンシングするミュージカルを、華やかなセットと照明を使って舞台かショーのようなゴージャスな演出で見せながら映画という媒体を最大限に活かした演出で高めていて眼福。
であるのに、描いているドラマはまるで正反対とも言えるような身近な恋愛譚であるってーのがこの作品最大の魅力!
映画の中という現実離れした虚構ではなく、スターが華やかに演じる憧れの夢世界でもなく、そこら中にいる普遍的で凡庸な我々が手の届く愛おしい人生の幸福がある。
相手に不満を抱えたり人生での夢がすれ違ったり浮気したりっつーダメダメなところが生々しいし、出てくる人みんな程よくいい人達で、友達にいそうなリアル感が非常に良い。
ラスベガスが舞台ってところを映画的な要素にせず、どこにだって普通の人たちが多くを占めてるんだって気付かされる寄り添い方も良い。
キャラの表情をアップでチラリと挿入したり、ストーリーには関係ない台詞でその生々しいリアルなキャラクター性を描写する上手さも唸る。

演出は華麗でファンタジックでありながら展開のトーンは一貫していて、ドラマを盛り上げんと劇的にできそうなクライマックスの展開も安易に終わらせず、虚構のあり得なさではなく、現実だったらって視点から我々の本当のツボを刺激する描写で〆るってところが秀逸。
最後の最後までニクいほど魅力的な映画だった。笑って泣いた。
目指した方向性としては完璧な完成度だと思う。大傑作!
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