三樹夫

籠の中の乙女の三樹夫のレビュー・感想・評価

籠の中の乙女(2009年製作の映画)
3.4
外の世界は汚れているので息子1人と娘2人を完全に家の中に隔離し、独自の狂気的な世界を家の中で構築する異常な家族の話。単語の本来の意味を別の意味へと置き換えまるで異世界を作り上げ、外にはネコというとんでもないものがいるからお前たちは外に出てはいけないとオヤジが俺ワールドを家の中に敷く。
『聖なる鹿殺し』以降で判明したヨルゴス・ランティモスの父親との不和を思うと、この映画を観ても父親となんかあったなと、現実での父親との嫌な記憶が不穏な感じで反映されているように思える。この映画をざっくり言うと、家父長制を敷くオヤジのせいで酷い目に遭うという作品だし。家父たろうとするオヤジは自作自演的に自分がいかに家父たり得る良き父親かというのをアピールしてくる。ただその様は血まみれで帰ってきたりプールに魚を放つなど滑稽で、この作品以降にも見られるヨルゴス・ランティモスのオフビートな笑いになっている。這いつくばって吠える練習しているのはオヤジの支配欲丸出しのグロテスクさがありながらも笑ってしまう。
外部との接触により、あれこれおかしいんじゃねと外の世界へというか家父長制からの脱出へと踏み出すが、実際に外の世界へと出るのかどうかはベンツのトランクを延々映しプツっと終わり観客に委ねられている。外部との接触っていってもたぶん『ロッキー』を観たとかそんなんで、どこかボンクラ感がある。それまで外部を知らなかったのにスタローンモノマネが結構似ていた。

黄土色の水滴みたいなバカでかいモザイクが印象に残る。家族が寝静まった後にこっそりビデオを観るシーンは、中学生の時夜中の家族が寝静まった後でこっそりAVを観たことを思い出すというか、まさにそういうことを想起させるシーンだった。
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