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ブエノスアイレスのmayのネタバレレビュー・内容・結末

ブエノスアイレス(1997年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

イグアスの滝は、先住民グアラニ族の言葉で「大いなる水」という意味。だけど、別名は「悪魔の喉笛」。

イグアスの滝は、ふたりのあいだで、愛や性の喜びが迸る象徴であり、理想像、でもある。まさに、大いなる水、なのだ、

しかし、大喧嘩をして、イグアスの滝にふたりで辿り着くことはできないし、いつもすれ違ってしまう。部屋にあるのは、イグアスの滝がデザインされたランプ。ふたりのあいだにあるのは、本物のイグアスの滝ではなく、光で照らし出されるイメージ(幻影)としてのイグアスの滝でしかないことが暗示される。まるで、悪魔がふたりを惑わせてるのではないか、というくらい、2人の関係はうまくいかない、

圧倒的なイグアスの滝とは真逆の性質を持つ、澱んだ川で、ファイがボートで当てもなく漂うシーンがある。それも苦悩に満ちた表情で。
そして、ファイは旅の最後にひとりでイグアスの滝に行くのだけれど、ウィンがこの場に一緒にいないことに虚しさを感じるだけだった。
愛や性の喜びはふたりのあいだでは実現されない、

台湾にかえったファイは、旅先で親しくなったチャンの実家を見つけて、会いたければ会える、と希望を見出す。最後はモノレールに乗って、夜の街の灯りに照らされて、再出発が暗示される。だけれど、あんなに、耳が良くて、人の声をきくだけで、その人の感情がわかると言っていたチャンは、録音されたファイの声を「機械が壊れてしまっていたのかもしれない」「泣き声のような音」しか聞こえなかったと、彼の悲しみを理解することが、できない。悲しいすれ違いは、ここでも再生産されてしまう、


パスポートを奪われたままのウィンはどうするのだろう、出国もできず、ブエノスアイレスを漂うことしかできない、


メモ✏️
・「ここにウィンがいないことが悲しかった」
・「ウィンのやり直そうがこわい」


4Kレストア版(シネマート新宿は2K)
クラシカルサウンドにて鑑賞
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