みや

サイコのみやのネタバレレビュー・内容・結末

サイコ(1960年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

不動産会社に勤務するマリオンは、親の借金返済と元妻への慰謝料を理由に結婚してくれない恋人との関係に悩んでいた。大金を銀行へ運ぶ仕事を任されたマリオンは、金を持ち逃げして恋人の元へ向かうが、大雨のせいで車を止めざるを得なくなる。偶然見つけて宿泊することにした「ベイツ・モーテル」で、心を病んだ母と暮らしながら宿を経営する青年ノーマンとの出会いが、彼女の人生を変えるのだった。

原作はロバート・ブロックの同名小説。未読。
3度目の鑑賞でも面白い!古い白黒映画でありながら、サイコ・ホラーの傑作は現代でも心を滾らせてくれる。
開始50分、全体の約半分のところで主人公のマリオンが死に、恋人と妹が主人公に切り替わるのを初めて見た時の衝撃は今でも忘れられない。職場で思わぬ大金を渡された女が葛藤しながら横領して罪悪感に怯えたり、誰かに追われたり、そういう話だと思っていたのに一気に転換する。これは何度観ても意外性があって、潔い急展開が気持ちいい。

人を不快にさせるOP曲から既に昂り、その後も不安感と緊張感を煽る音楽にワクワクする。どうやったらこんな嫌な音を生み出せるのだろう。天才的な嫌がらせ。
声のみで状況を伝えたり、視線だけで訴えかけてきたり、様々な場面での演出が上手い。じーっと見つめてくる警察官の視線が本当に嫌。我が事のようにドキドキさせられた。
体調不良を偽って早退したのに車を運転していたら赤信号の停車中に横断歩道で上司と出くわす絶望的状況など、色々な出来事が的確なタイミングで起こるから、条件反射で「嫌だ」と感じるスイッチにカチッカチッと整然と嵌っていく。本当に嫌だ。
緩急も素晴らしくて、静の気味悪さと動の気味悪さを両方味わえた。一番好きな場面は、マリオンの死体や荷物を載せた車が沼にじわじわと沈んでいくところ。彼女の存在が明確にゆっくりと消されていく様子に、今回もゾッとした。

最後の真相も衝撃的で、何年経っても明確に覚えていた。現在だと解離性同一性障害は珍しくない設定だけれど、当時だと新鮮だったのかな?
ド直球のサイコ・ホラーであると同時に、恋人と妹が真相に至るまで探っていくミステリでもある。恐怖だけではないヒリヒリ感を味わえるのも楽しかった。
姉妹が派手顔の美人さんで、どちらの悲鳴も勢いがあって良き。
みや

みや