イトウモ

落穂拾いのイトウモのレビュー・感想・評価

落穂拾い(2000年製作の映画)
4.5
めちゃくちゃ面白かった

ミレーの「落穂広い」から始まって、穀物を収穫する女性の身振りから連想し、廃品回収業者、路上生活者、珍品コレクター、消費社会への抗議活動として、拾ったもので生計を立てたり食事をまかなったりする人が出てくる。そこにヴァルダ自身も加わって、片手で撮影できるようになった新しい機材でもう片方の自分の手を撮り、その手の上に重ねられた年齢に気づき、自分の日本で観光した土産物を広げ、ディスカウントショップでは「落穂拾い」のカリカチュアを「拾っ」て帰る。そうするうちにこの映画自体が、なにかの収集品リストになって、個人映画とはそもそも「落穂拾い」である、いや映画という撮って、編集してという営みは全て「落ち穂拾い」かもしれないが、そういうふうにまとめたり、抽象化したり、理論化したり、社会の中のアチチュードとして完成する前にまた別の行為に連想してうつっていっていつまでたっても終わらない。移動する自動車の車窓が撮られているのがすごくいい。

ゴダールとヴァルダ、年齢を重ねた二人が映画は「手」が撮るものだと語るのには、感じ入る。ヴァルダのシワシワの手と、ゴダールが映画史で引用するジャコメッティ彫刻様の手、そして「イメージの本」の5本指

最後に登場する、高学歴プアで移民に出前授業をボランティアでする青年と出会った時、やっとこの映画が終われるとでも思ったのだろう。

老人になっても真剣に遊ぶことが守られている。尊い