シズヲ

トゥームストーンのシズヲのレビュー・感想・評価

トゥームストーン(1993年製作の映画)
3.8
「復讐さ」
「何への?」
「生まれた事だ」

鉱山の町トゥームストーンを舞台に、ワイアット・アープ達とならず者一味カウボーイズの対立を描く。西部劇としては王道(というか古典)の題材だけど、有名なOK牧場の決闘をラストではなく映画半ばの中間地点に配置しているのが特徴的。砂埃臭さ漂うディティールに加えて町並みや人々の生々しい質感が良い意味で西部劇らしい。『OK牧場の決斗』で見られた四人で横並びに歩くシークエンスが描かれているのが嬉しいし、チャールストン・ヘストンやハリー・ケリー・ジュニアら往年の俳優が脇役として登場しているのもニクい。映画冒頭に『大列車強盗』の引用が見られるのも味わい深い。

ドラマとしては正直そんなに上手い訳でもなく、手垢の付いた題材ゆえか登場人物の掘り下げを予定調和的に省略してる感は否めない。そのせいかアープ兄弟のキャラクターは全体的に薄味ぎみ。ワイアット・アープとドク・ホリデイの友情も終盤以外そこまで深く描かれているようには見えないし、ラブロマンスの壁となってしまうアヘン中毒の奥さんとの関係性も結局なあなあで片付けられた印象。「なぜリンゴのような男は悪事を繰り返すのか」の問答は興味深かっただけに、友情や愛を得てそこから脱却したアープ&ドクと対比させるなりしてもうちょっと突き詰めてほしかった。

それでも本作が結構好きなのは、舞台設定に一定のリアリティを込めた上で“純粋な娯楽作”へと落とし込んでいるからである。映画冒頭でカウボーイズがいかに悪逆であるかが示されるものの、作中で描かれるアープ一家VSカウボーイズは割と“ヤクザ同士の抗争”に近い。OK牧場の決闘や終盤のワイアット・アープ団のリベンジは容赦無さすぎて殆どカチコミのノリである。それでいて西部開拓史批判やウェットなドラマなどの捻くれた作風に傾かず、ヒロイック性やブロマンス的関係、景気の良い銃撃戦といった娯楽的要素を重視しているのがやっぱり好感。ある程度リアルに描きつつも基本的には“90年代に撮った王道のエンタメ西部劇”なのが良い。
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