本作は多角的に見るべし!
これも随分前にT-SITEで熱弁したんだけど消えたので再記録。
この映画は兎にも角にも革新的な、新たな世界を生み出したホラー映画である。
低予算、CGなしにて制作された工夫に工夫を凝らして作られた新たなホラージャンルのデベロッパー。
恐らくはつまらなかった、怖くなかった、否定的な意見の方が多いと存じる。
まず、あらすじを説明すると家で怪奇現象に襲われる。その正体を突き止める為に各部屋に固定カメラを設置し、見守るという実に単純なもの。
つまり、ストーリーを追うような映画ではなく設定を見る映画。
過程からの結末を楽しむもの。
それから、昨今、導入されるようになっている定点カメラ視点のホラーゲームも着想はこちらからで間違いないだろう。
と、いうわけで最初に言っておくとこの映画を一作の映画として見るのではなく一本のビデオテープとして見てほしい。
そう考えると大変近しさを感じ、よりホラーよりの見方が出来ると思う。
以下、オチについては触れないけど内容に触れないと説明が難しいので内容に触れる。
劇場予告をご覧になった方もいるだろうが、低予算で怪奇現象を定点カメラでCGなしで起こす。
これが当時、とても話題になった。
低予算を売りにして動員を狙う俗物が制作したものではなく、低予算でもここまでのものが作れるのだという逆転の発想で話題になり、ついには続編が制作されるまでの大ヒットとなった。
内容自体は大変シンプルな上、凝った演出も少ないので間延びしている感覚はない事はない。
間の繋ぎ方もレトロで効果音で予感を演出する。
そして不意に起こる現象。
ぶっちゃけてしまえばこれだけの映画。
オチはあるにはあるし、びっくりシーンもなくはない。
しかし、普通のホラー映画のようにただ、まくしたてるようにドカドカ音を立て、驚かして、襲ってくる。
そんなホラーとは一線を画している。
『静』と『動』のメリハリがとても心地よい。常に何か起こる気配を感じつつも、起きなかったり。
例えば一人でお化け屋敷に行く方は少なかろうが私自身は一人でお化け屋敷に入る。
その時にどういう心境で入るか、これはホラー映画とは違う。
ホラー映画は当然ストーリー展開を意識しつつも驚かせるシーンやオチで流れるようにして観る。
お化け屋敷はそもそもストーリーはない(近年では五味さんプロデュースの場合はストーリーがあるので一定数は除く。)
中に入ったら孤独、すると個人対製作者の戦い。どこで驚かせてくるのか、『静かな』部屋と『動き』のある部屋のメリハリを見定めながら進んでいく。
そう、まさしくこの映画はお化け屋敷テイストなのだ。
その結論に至った時、個人的にはとんでもない衝撃だった。
ホラー映画の新たな形をまざまざと見せつけられた瞬間であった。
POVの次はこれだと、確信した。
だから、過度な期待はせずゆったりとこの低予算を楽しんだらいい。
もはや、100円で借りられる世の中なのだから文句はあるまい。
映画館で観るべき映画とは思うが、期待しすぎた人が観るとよくないと思うからお家でみていいかな。
以下、ネタバレと映画のオチについて
結局具体的な霊的現象の正体はわからない事、現象が起きるまでのカメラ回しが長い事、そもそも現象自体が少ない事、これが否定的な意見の多くを締めると思っている。
でも、一本の中身のわからない友人が残したテープにこういうたぐいの物が記録されていたらどうだろうか、急に身近で恐ろしい話にならないだろうか。
終わり方もテープレコーダーの録画されていない部分が再生されているかのような余韻。
初めてこれを観た時、トリハダがたった。何て身近なホラー映画なんだと。
こんな新しいホラーに巡り会えた事に感動した。
そんな映画だった。
ちなみに続編もあるけど、本作が唯一至高かな。面白くないことはないんだけどだんだんぶっ飛んでいくので。