けーはち

暗殺の森のけーはちのレビュー・感想・評価

暗殺の森(1970年製作の映画)
3.6
ゲイに関係を迫られ撃ち殺した少年期のトラウマから「普通」を目指す主人公。普通の女を娶り、大戦時には体制側だったファシストを志し、恩師を暗殺するため近づく。性の経験が思想全般に飛躍するのはいささかフロイト的に過ぎるが、彼は性的な関係にも暗殺にも積極的な行動はなく、ファシズムが敗北すると他責的になる優柔不断ダメ男。「洞窟の人は影を真実と思い込む。その人は真実を見ても、影の方を真実だと思う」と、プラトンの隠喩が引用される劇中の思想は、「普通=了見の狭い人間の思い込み」って所か。光と影を対照的にした構図や、女性同士のダンスシーンなど同性愛的にも見える睦まじい関係を映す画が美しく印象深い。思想性と様式美が強いのが、この頃のベルトルッチだろう(優柔不断な主人公に暗殺の決行を迫る使者が現れるが、肝心の暗殺シーンで待ち伏せた暗殺者がワラワラ湧いてくる所とか見ると、こんなグダグダな主人公を参加させなくても暗殺できるじゃんって思う。でも、そこは様式美でリアリズムじゃない)。