ユースケ

トータル・リコールのユースケのネタバレレビュー・内容・結末

トータル・リコール(1990年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

記憶とは、単なる過去の出来事ではなく、自分とは何者であるかという認識そのものである。もしも、そんな記憶が販売されてしまったら、あなたは自分という存在に確信が持てるだろうか…

そんなディック感覚(実存的不安)溢れるフィリップ・K・ディックの【追憶売ります】を主演アーノルド・シュワルツェネッガー×監督ポール・ヴァ―ホーヴェンで映像化した本作は、誰が味方で誰が敵か?いつからが現実でいつからが夢か?二転三転するサスペンスフルなSFを筋肉とエロスとバイオレスでコーティングした一本。
映画音楽の巨匠ジェリー・ゴールドスミスが手掛けるオープニングテーマ曲【火星の夢】からアゲアゲです。

みどころは、【遊星からの物体X】や【ロボコップ】の特殊メイクを手掛けたロブ・ボッティンの匠の業。
真空に放り出されて深海魚のように飛び出すシュワちゃんの目と舌、ピンポン玉サイズの発信機を鼻の奥から取り出そうとしてはち切れんばかりに膨らむシュワちゃんの鼻、オバちゃんの顔の中から現れるシュワちゃんの顔、そして、グロテスクなミュータントの数々。特に、ポール・ヴァーホーヴェン監督のアイデアを形にした三連おっぱいミュータントはたまりません。俺も手が三本欲しいよ。

更に、ニセモノの妻だったシャロン・ストーンの頭をぶち抜いて「これで離婚だ!」や顔面にパンチを食らわせ「パーティで会おう!」と捨て台詞を吐いたマイケル・アイアンサイドの両腕を引きちぎって「パーティで会おう!」など、人を殺して捨て台詞も秀逸。もちろん、シュワちゃん公認の吹替声優・玄田哲章の名言が楽しめる日本語吹替版での鑑賞がオススメです。

【エイリアン】の原案コンビであるダン・オバノンとロナルド・シュゼットが書き上げた脚本を拾い上げ、ポール・ヴァ―ホーヴェン監督を引っ張り出し、お蔵入りになりかけていた企画を復活させたシュワちゃんは本当に偉い。

夢の始まりについて…
本作は全てが現実とも全てが夢とも解釈できる構成になっていますが、ポール・ヴァーホーヴェン監督の見解はリコール社での記憶の植え付けからが夢で、ラストのホワイトアウトは目覚めと同時に脳が破壊されて植物状態になってしまった事を提示しているそうです。
日本語吹替版のビデオでは、日本語吹替版のスタッフによって、全ては夢だったというカットが追加されていますがそんな甘い結末ではなかったようです。