しーかず

ダンサー・イン・ザ・ダークのしーかずのネタバレレビュー・内容・結末

4.1

このレビューはネタバレを含みます

悲劇的な内容から「二度と観たくない映画」なんて話題にも上がる今作だけど、個人的には純粋に映画として傑作だと思う。ホームビデオのような映像と欧州映画の独特な暗さ、質素さ。酷く辛い内容の中で主人公にビョークを抜擢して妄想を明るいミュージカル調で描いているアイデアも凄いし、奇抜で独特なリズムのビョークの音楽も歪な世界観の中で抜群に光ってる。悲劇であり喜劇でもあるような唯一無二の作品だと思う。内容に関してはやはり主人公のセルマが可哀想すぎるんだけど、その中にもお金の怖さや、隣人に気を許してどうなったかなど、日常に潜む普遍的な部分も考えさせられる。作中で悲劇の元となるビルは結果的に最悪で同情の余地もない悪を働いてしまったわけだけど、彼も元は悪人ではないと思っていて、死を考えるほど追い込まれた精神状態で目先の手に入りそうなお金を前にして善を捨ててしまった。そんな誰もが根に持っている悪意や、人の怖さも感じた。序盤からセルマが話していてラストに繋がる「最後から2番目の歌」。"私たちがそうさせない限り、最後の歌にはならない"。アート性も高く、悲しい余韻が押し寄せる傑作だった。
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