こたつむり

赤ちゃん泥棒のこたつむりのレビュー・感想・評価

赤ちゃん泥棒(1987年製作の映画)
3.7
邦題そのままに、不妊症で悩む二人が赤ちゃんを攫い、自分の子供として育てようとするコメディ。

いやぁ。とても難しい題材に挑戦しましたね。
子供に関しては容易く“鬼”になるのが親。だから、実際に子供を持つ身としても。そして、不妊症で悩む人の気持ちを考えても。安易なコメディは感情を逆撫でし、嫌悪感を抱く可能性が高いと思うのです。

ただ、この親子関係については。
日本とアメリカの風土の違いを考慮する必要があるでしょう。向こうでは養子制度が日常に密着していますし、親と子供の人格分離が幼子のときから徹底していますものね(それが顕著なのが、赤ん坊でも一人で寝る…というやつですね。あれって授乳期も同じように部屋を分けているのでしょうか?)。

ただ、それらを考慮しても。
脚本や演出などで肩が下がる可能性もあると思います。特にアクション場面。まだ自分で立って歩けない赤ん坊を抱えて走る場面など「転んだらどうするのだ」なんて思ってしまいますからね。たとえ、それが緊迫感をもたらすための演出だとしても、やはり親視点では許容できません。

だから、本作を鑑賞するときは。
フィクションであること。そして、子供が傷ついたという話を耳にしていないので結果オーライと捉えること。この二点を念頭に置いて鑑賞することが楽しむ秘訣だと思います。だから、どちらかというと独身者向け…の作品なのかも。

そして、そんなハードルをクリアすれば。
本作の微妙な立ち位置を中和する存在を十二分に楽しめると思うのです。それは、主人公を演じる俳優さん。犯罪者だけど、どこか憎めない。不真面目だけど、責任を取ることを厭わない。そんな微妙な立ち位置を飄々とこなす存在感。うん。なかなかの逸材です。何だか大物俳優さんに似ているのも良いです。

…って、ええ。ええ。
あまりにもワザとらしい文章でしたね。そうです。主人公を演じているのはニコラス・ケイジです。しかし、本当に最初は判りませんでしたよ。だって、とても豊かですからね!あた…いや表情が。うん。かみ…ではなく演技が。とてもフサ…相応しいくらいに豊かだったのです!

そして、彼の豊かな存在感以上に。
豊かなメッセージが詰まった物語でした。
確かにモラル的な部分ではハードルがありますが、そこを乗り越えれば、目の前に豊潤な草原が拡がるような想いを抱くことが出来ると思います。うん。心の中までフサフサな気分です。あ。
こたつむり

こたつむり