ちろる

反撥のちろるのレビュー・感想・評価

反撥(1964年製作の映画)
4.0
カトリーヌ・ドヌーブ演じる主人公キャロルがどんどん病んでくると言うよりは、はじめからもう随分な病み系。
笑わないし。言葉もほとんど発しない、そんなドヌーブが美人だけどほんと不気味。
長編三分作品の中ではこれがダントツでサイコスリラー度高い作品です。

極度に同居する姉に依存して男のデートさえ姉と夕飯食べるからと断る。
姉が不倫にうつつを抜かし始めると、より一層キャロルの日常は精神と乖離し、仕事でとお客様を怪我させてしまうほどに。
姉を奪った既婚者の男への嫌悪が、やがて「男性」そのものへの嫌悪と変わり、それでもそのフランス人形のような見た目の美しさがキャロルをほっとくはずもないから事態は残酷な方面に。
訳もわからないままサイコな行動と出るキャロルはもちろん恐ろしいが、度々登場するウサギの丸焼きのカメラアップがなんともグロテスクだから食事前はご注意を!

また、キャロルの妄想パートと、現実パートはとても曖昧で、引きこもるキャロルの部屋の壁が崩れたり、無数の手が出たり、
ハエがたかるウサギの丸焼きとか、人形のようにボサボサのブロンドを振り乱すキャロルまで、結構カラーならトラウマ級
これに合わせてキャロルの壊れていく精神を表現するような不気味な効果音や、隣室の姉の喘ぎ声や鳴り響く電話のベルや、絶え間ない時計の針の音など、音の演出も鬼気迫るものがあります。

はじめの方はまるで抜け殻のように放心状態のキャロルが、次々と恐ろしい行為を積み重ねていく事で、満足感を得たかのように不気味な笑みを浮かべたりする表情の演技だとか、男性を嫌悪しながらもあまりに無防備なエロティックな雰囲気を醸し出すキャロルの存在感はカトリーヌ・ドヌーブだからこそ作り上げられた演技なのかも。

現実と妄想が混沌とした世界を悪夢のような映像の羅列で見せつけた本作。
すごいインパクトだったけど、日曜日の微睡で観るものでは無かったかもしれない(笑)と反省しました。
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