ヘロヘロ

悪魔の植物人間のヘロヘロのネタバレレビュー・内容・結末

悪魔の植物人間(1973年製作の映画)
3.3

このレビューはネタバレを含みます

撮影監督を努めた『黒い牡牛』を観ようと思っていたが、ジャックカーディフ自身の監督作の方が気になり本作にジャンプ。
冒頭で植物の成長をタイムラプス撮影した、まるでイギリスBBC製作の教育番組的な映像からめっちゃ惹かれます。カメラマン出身の監督らしい拘りのように思いました。タイトル文字のデザインもいい感じです。原題は“The Mutations”で「突然変異」の意。本編中にノルター教授から何度も発せられる言葉でもある。植物の能力を人間に移植しようとした科学者のお話。

本編はと言えば、オープニングタイトルの植物の映像ほどの熱は入っておらず、かなりチープなシーンが多く、緊張感は持続しないのが残念。予算も時間もオープニングに全て注いでしまっていたとしたら、本作は、この点をみても、既に奇形として誕生する運命を纏っているのかも知れない。

さて、
誕生日パーティーを台無しにするなどの普段の非道の恨みによって「同僚のフリークス」たちからの復讐を受け、ナイフを突き刺された挙句犬に喰われて最期を迎える“世界一の醜男”ことリンチ。
普通の顔になりたい彼は、仲間(“He‘s one of us”)だと言ってくれる見世物小屋のフリークスたちとノルター教授との間で葛藤を抱えている。
自分の醜い顔を直してくれる一縷の望みに賭けて教授の悪事を手伝っているが、他人への暴力性をコントロールできない。そう、まるで『ダークマン』の様に制御不能の暴力衝動を身に纏っており、彼がこの悲劇の本当の主人公なのだと思う。

お気に入りシーン
/ウサギちゃん撫で撫で〜からの食虫植物へ投入
/食虫植物となったトニーによって半分溶かされたノルター教授ことドナルドプレザンスの造形がキュートw!

作品は一見するとチープな恐怖映画なんですけど、因果応報の倫理観に貫かれた真面目なお話である点においてギャップ萌えです。

同じ原案をアメリカで作ったら『悪魔の毒毒モンスター』みたいなカラッとした楽天的おバカ映画になるんでしょうけど、本作はいい意味でヨーロッパ的な暗さと薄ら寒い空気感が際立つ一作で、この辺りがイギリス映画的?味なのではないでしょうか。

ラストもしっかり恐怖映画っぽい余韻のある終わり方で、満足感は高い映画でした。

20221001