ヘロヘロ

エイス・グレード 世界でいちばんクールな私へのヘロヘロのレビュー・感想・評価

4.0
ミドルスクールで若干中二病な主人公は、翌年のハイスクール入学に向けて、クールでカッコいい大人の女性になるために焦っているAmerican少女。物語では彼女の苦闘が描かれる。
アメリカ文化の残酷さと心地よさとが描かれて日本のそれとのギャップに比較文化的な視点を提供してくれて楽しい。
父娘の関係性の困難さとそれにどう付き合っていくかという対人関係も描かれてとても教育的な映画とも言える。
SNSを使って自分の置かれた困難な状況を自己コンサルティングしていく現代的な表現がとてもユニークだと思う。

シーン/運転中のパパに対してパパの表情に散々文句言った挙句、最後に「please」と言う主人公、それに大してパパは「オーケイ」とゆっくり答える。
生意気な言動の中にも他人への尊敬を失っていない娘を丁寧で落ち着いた言葉で教育しようとする父親の愛情を感じるとても良いシーンだ。

‘To the coolest girl in the world’
「世界で一番クールな女の子へ」を燃やすシーン。
父娘役の役者によって、ここで演じられているのは話者の言葉に耳を傾ける事によって惹起される心の表現で、その感情がスクリーンに立ち現れるその瞬間である。この表象は、小説や絵画や演劇に対して映画が特権的に持つ表現方法の一つだ。また、この瞬間が彼女の勇気によってもたらされたという説話的な納得感を鑑賞者にもたらし得たのは、本作の製作陣の力量の高さを表している。

未来への自分へのビデオメッセージで
「現状が最悪でも、大丈夫。前に進んでて常に変化しているから。次に何が起こるかワクワクしている。」ってポジティブなセリフはこの映画のメッセージだ。

キャスト/
エルシーフィッシャー
役と同じ14、5歳の若手俳優。
小役時代は『怪盗グルー』のちっちゃなアグネス役の声優(日本語吹替は芦田愛菜)だったらしいが、吹替で観たので覚えてない。
放送映画批評家協会の若手俳優賞を受賞した演技は目と口元の繊細な演技や前のめりに猫背で歩くポッチャリ型の体型もおそらく役作りで獲得したものだと思うので、かなりの演技派かと。作品次第ですぐにアカデミー賞候補にもなるだろう。


ジョシュハミルトン
パパ役でインディペンデントスピリット賞助演男優賞ノミネート(らしい)
娘から見ると頼りなげでウザいけど、心から娘を愛し、心配の末却って娘からは遠ざけられもするが、その間も丁寧に娘に接している様を素晴らしく抑制の効いた演技で表現している。
未来の成長した娘との関係はとても良いものになるだろう事を想像させる。それはパパのこの献身的な振る舞いがそう思わせるのだと思う。

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「クールでいてね。あなたになるのが楽しみ」とは、主人公が未来の自分へ送るモノローグ。こんな素晴らしいセリフで今を生きる勇気をたくさんもらえたクールな映画です。グッチ〜。