荒野の狼

愛と死をみつめての荒野の狼のレビュー・感想・評価

愛と死をみつめて(1964年製作の映画)
5.0
本作は、私が子供の頃から有名で、一度は視聴しているのだが、実話と知ったのは、最近、再び鑑賞した後で。映画鑑賞中は、ストーリーの流れが悪かったり、通常の映画の約束事が守られていなかったりした部分があったが、主人公二人の文通を書籍化した(1963年)ものが原作と知り納得。作られた物語でないだけに、お決まりのパターンにならないところがリアリティを持たせていたというわけで、実話と知ってから鑑賞するべきであったと反省。しかし、実話と知ってから、映画のシーンを思い返すと感動は深まった。
映画化は原作発行の翌年の1964年。全編を吉永小百合の懸命な生き様に惹きつけられる作品であるが、吉永以上に素晴らしいのが、父親役の笠智衆。難病の娘を持った父は、人の前では感情を現わさないが、ひとり顔をそむけた時に、感情をわずかな顔の表現だけで見せる名演技。吉永をして「女・笠智衆」になりたいと言わしめたのは納得。
軟骨肉腫は、現在5年生存率70-80%と本作公開時よりは、向上しているが、治療は手術療法のみという点は変わらない。難病の市民教育という観点からも重要な作品。
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