イチロヲ

フェイドTOブラックのイチロヲのレビュー・感想・評価

フェイドTOブラック(1980年製作の映画)
4.0
クラシック映画の世界に現実逃避しているオタクの青年が、意地悪な人間からの差別行為に耐え忍びながら、恋愛成就を目指そうとする。日陰者のフラストレーションの昂りを題材に取っている、サイコ・スリラー映画。

本作の主人公は、日常的に「否定される立場の人間」として登場。自分が否定されない世界は、大好きな映画の中にしかないため、映画の登場人物をイマジナリー・フレンド(仮想の友達)にすることにより、自己を確立させている。

主人公が惚れるヒロインに魅力が感じられないため、恋物語としては乗り切れない部分があるけれども、映画の知識だけを利用して女性に接近しようとする姿勢には、身につまされるものがある。

訳あって「イジメられっ子精神」を拗らせてしまった諸兄にとっては、マストとなる作品。「自分が主役になれる場所がある!」という「ロッキー・ホラー・ショー」にも相通じるモチーフが含まれており、無性に虚空を仰ぎたくなってくる。
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