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007/カジノ・ロワイヤルのtakのレビュー・感想・評価

007/カジノ・ロワイヤル(1967年製作の映画)
3.3
イアン・フレミングの原作「カジノ・ロワイヤル」の映画化作品。ダニエル・クレイグ版とは全く違う、大スケール、オールスターキャストのコメディ映画である。製作上の様々な問題があって出来上がった異様な産物。原作リスペクトとは程遠い映画だが、当時フレミング自身はこの映画化をどう思っていたのだろう、と想像してしまう。フレミング自身は、ジェームズ・ボンドはデビッド・ニーブンをイメージしていたと聞くので、その点についてだけは異論はなかったのかな。

確かに異様な作品なのだが、製作から長らく経った今観ると、その後の米国製プレイボーイスパイ映画や、「オースティン・パワーズ」に代表されるスパイコメディの先駆けとも言えるだけに、そのハチャメチャぶりを楽しんでしまう。

オシャレなデザインのタイトルバックにパート・バカラックの音楽。80年代のクイズ番組「世界まるごとHow Much」の最後に流れるプレゼントクイズのBGM、これだったよね!軽快なハーブ・アルパートのトランペット🎺に心が躍る80年代育ち😆w。挿入歌は名曲The Look Of Love(恋の面影)。いい曲だ。ライオンが出てくる場面では、「野生のエルザ」主題曲が流れるおふざけも。デボラ・カーが出る場面では突然悲しげなメロディに変わる。これ彼女がらみの映画主題曲?自信ないけど、修道女になる場面が出てくるから「黒水仙」なのかな。

ストーリーの軸となるのは、カジノで悪事の資金調達をするルシッフルの企てを阻止するために、独自のバカラ必勝法を持つイブリンにジェームズ・ボンドを名乗らせて対決させるお話。しかしそこに辿り着くまでに、引退したボンド卿を復帰させるための紆余曲折、女だらけの屋敷でのどんちゃん騒ぎ、マネーぺニーの娘による新007スカウト。そして実業家となったヴェスパー・リンドを使ってイブリンを仲間にし、ボンド卿の娘まで登場する。ストーリーをちゃんと追うと回りくどい展開にイライラすること必至だが、カラフルな色彩感覚と、今の誰?と目が離せないカメオ出演と遊び心を超越した悪ふざけで飽きないから不思議。

ボンド引退後に後継者がボンドを名乗っているから、複数のボンドがいるという設定。その一人で、ボンドの甥ジミー・ボンドを演ずるのはわれらがウディ・アレン先生。これがアレンらしいコンプレックスの塊で、笑わせてくれる。ウルスラ・アンドレスは「ドクター・ノオ」とは違って妖艶な役柄、ルシッフルはオーソン・ウェルズが貫禄を示す。イブリンを誘惑する美女ミス・フトモモはジャクリーン・ビセット♡。他にもシャルル・ボワイエ、ピーター・オトゥール、ジャン・ポール・ベルモンドなどなどチョイ役なのに豪華絢爛。ベルリンのオークション場面に出てくる男性は、「ロシアより愛をこめて」に出てくるチェスの人やんw。突然現れるフランケンシュタインの怪物。演じているのは後のダースヴェイダー、デビッド・プラウズw。

スパイ養成学校がドイツ映画「カリガリ博士」みたいな雰囲気だったり、共産圏の人物が出てくると照明が赤くなったり、クライマックスは空飛ぶ円盤まで登場して、まさに混沌。観る人を選ぶ映画だとは思うが、2時間のカオスを楽しもう。

初見は1983年1月、テレビ地上波。2024年2月、BS-TBSの録画で再鑑賞。鑑賞記録は初回を記す。
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