改名した三島こねこ

第十七捕虜収容所の改名した三島こねこのレビュー・感想・評価

第十七捕虜収容所(1953年製作の映画)
3.6
<概説>

WW2末期のドイツ捕虜収容所にて。米兵捕虜達の虜囚生活を真に脅かすものは暴力や飢餓等ではなかった。脱獄の密告者は何者なのかという疑念が囚人達を疑心暗鬼に貶める。名匠ビリー・ワイルダーによる戦争サスペンス。

<感想>

WW2直後の戦争映画でこの剽軽さ。

映画を娯楽作品とするビリー・ワイルダー監督の心意気が非常にニクイです。沈痛な感動とかは一切ナシに楽しめました。

本作の頭脳戦は贔屓目抜きに今もイケてます。

電線の結び目で信号を送ったり、ケレンの効いた密書ポストだったり。天才的な構想でなくてもサスペンスとしての魅力があればいいという、映像作品のひとつの本質をついています。

また「捕虜収容所とは劣悪で暴力的なこの世の地獄」という、ステレオタイプ的なイメージの逆をいくのがまた。

ドイツ兵だって米兵とバレーボールをしちゃったり、ジョークを言い合ったり。人間なのだから人間らしくて当然なのですけれど、今のナチドイツへの厳しすぎる論調があるだけに和気藹々とした収容所の様子が逆に新鮮。

「観客!このドイツ兵描写に問題はあるかね!」
「……ま、悪くないかな」

大っぴらに称賛はできませんが、肩を竦めながら表現への監査官殿に肩を竦めるくらいはしたいです。

国際条約だって言論の自由は認めてくれていますから。