Inagaquilala

インサイド・マンのInagaquilalaのレビュー・感想・評価

インサイド・マン(2006年製作の映画)
3.8
スペイン映画の「クリミナル・プラン 完全なる強奪計画」を観た後、銀行強盗つながりで観賞。銀行強盗モノは、イタリア映画の「黄金の七人」以来、何10作品も観てきたが、それぞれ工夫が発揮されるのは、①侵入方法(金庫破りも含めて)、②現金あるいは金塊の運搬方法、③脱出方法の3つだ。これらの方法がユニークであればあるほど作品は面白くなる(はずだ)。

「クリミナル・プラン 完全なる強奪計画」は、脱出方法が面白かったが(かなり力技に近かったが)、この「インサイド・マン」はさらにユニークな脱出方法を使う。強盗グループのリーダーは銀行の正面エントランスから堂々と脱出していくし、その他のメンバーもなるほどこの手があったのかという方法で脱出する。

この作品、全編に張りめぐらされた「事後」の映像に注意しなければいけない。まず冒頭、男のモノローグで始まるが、狭いところに閉じ込められてという暗に収監されていることを匂わすような言葉が語られる。そして物語がスタートすると、実際に進行する銀行強盗の場面に、すでに事件が終わって取り調べをしている時点の映像が頻繁に挿入される。これが後々かなりの意味を持ってくるインサートなのだ。最初はなぜと疑問が残る挿入シーンなのだが、後半になるに従って徐々にこの謎も解き明かされていく。

銀行強盗それ自体もなかなかユニークだ。銀行を襲ったグループは人質を集めて全員に同じつなぎを着せる。それは強盗グループと同じものだ。この時、いろいろなやりとりがあるのだが、観ていてもどれが犯人でどれが人質か、観ているこちらもわからなくなる。そして、これがこの銀行強盗のミソなのだ。

人質を取り、警察とは膠着状態になるのだが、この間に強盗グループはさまざまな仕掛けをしていく。とにかく、銀行モノとしてはとてもよくつくり込まれている作品で、とくに後半から強盗グループの真の狙いがわかってくると、さらに興味は深まる。

スパイク・リーの監督作品にしてはかなりエンタメ寄りの作品になっているが、シーンのあちこちに目立たぬように物語を解く鍵がパズルのように隠されており、再観賞必至かもしれない。「インサイド・マン」というタイトルも、終わってみるとなるほどと思わせるものとなっている。
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