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インサイド・マンのnetfilmsのレビュー・感想・評価

インサイド・マン(2006年製作の映画)
3.7
 狭い部屋でも、刑務所の部屋と普通の部屋では大違いだというダルトン・ラッセル(クライブ・オーウェン)の独白。ニューヨーク・マンハッタン、彼をリーダーとする4人の銀行強盗が、パーフェクト塗装サービスを装い、マンハッタン信託銀行を襲撃する。その手口は鮮やかで、銀行員は呆気に取られるが従うしかない。たまたま銀行前を通りかかった警備員の通報を受け、NY市警のフレイジャー(デンゼル・ワシントン)とミッチェル(キウェテル・イジョフォー)は現場に急行する。フレイジャーは以前関った麻薬事件で14万ドルの小切手が紛失するという事態に巻き込まれ、内務調査課から汚職の疑いをかけられていた。それだけに、今回の事件は汚名返上のチャンスだと張り切る。また、銀行の取締役会長アーサー・ケイス(クリストファー・プラマー)の命を受け、ニューヨークでも指折りの弁護士マデリーン・ホワイト(ジョディ・フォスター)も呼び出される。

 閑職に追い込まれそうな刑事フレイジャーとベテラン白人警部ジョン・ダリウス(ウィレム・デフォー)との対比。一見ただの銀行強盗に思えた一味は、「ケネディ空港にジャンボ機とパイロットを用意しろ。夜の9時以降、1時間ごとに人質を殺す。銀行には爆弾が仕掛けてある」との事細かな要求をするが、人を殺すでもなく、金を盗むでもなく、銀行を襲う必然性がなかなか見つからない。そこに今作の最大の旨味は隠されている。最新作『ブラック・クランズマン』に見られた黒人×白人の入れ子構造のような二重性は、主人公と犯人とを奇妙な因果で結ぶ。犯人が仕掛けた完全犯罪トリックの全貌が掴める中盤以降、いかにも白人インテリ・エリートのマデリーンの介入あたりから、物語が失速するのはやや残念だが、ナチスの灰色の影をチラつかせたクライマックスまで徹底したエンターテインメントで迫る。
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