これがジョセフ・ロージーの作品とはにわかには信じがたい。
しかも反戦映画の『銃殺』と、実験的な要素が目立つ『できごと』との間に撮られているとはこれまた驚きである。
内容は60年代にありがちなケレン味あふれるスパイコメディ。同時代の007等と比較して語られがちな本作であるが、米ソ冷戦時代におけるプロパガンダにも成り得るような正統派スパイアクションではなく、このようなおちゃらけた作風(敵も味方もみんなバカ)を選択しているあたりはさすがロージーであると言ったところか。
007であればラストはセックスして終わるところを、主人公2人に「ベッドシーンがないけどこれはこれで楽しい」なんて歌まで歌わせて、ハリウッド映画における異性愛主義の否定までほんのり匂わせている。
そうしたロージーの審美眼が垣間見れるだけに、映画全体の作りがなんとも惜しい。