このレビューはネタバレを含みます
まいった。さすがジョセフ・ロージー。
孤高の天才ながら、きめ細やかな演出により無駄の一才を省くような職人技まで見せてくる。
華やかなブルジョワ生活の陰で辺境に追いやられる男女の悲哀。
その悲劇の物語の中に無分別なレオだけでなく、戦争で顔に傷を負ったヒューも例外なく投入する残酷さ!
この悲劇はレオから成長の機会を奪い、ヒューからも結婚の幸福を奪う。当のカップルも男の自殺により破綻するという最悪な結末を迎える!
単なるブルジョワ批判に止まらず、過去と現在が境目なく行き来する演出により、根本的な問題が何一つ解決していないという虚無感が全面に押し出される。
特筆すべき場面は、ある日レオがテッドを訪ねるとテッドが猟銃をメンテナンスしているカット。銃口を上向きにして筒を覗いている何気ないカットなのだが、このカットを入れたロージーは天才という他ない!