<概説>
世界の黒澤×文豪シェイクスピア
四大悲劇『マクベス』が時代劇調にアレンジされて蘇る。妖婆の予言に誑かされた男は、一時の栄華の代償として破滅へと突き進んでいく。
<感想>
『用心棒』や『七人の侍』と、黒澤明が時代劇を作るとハズレがありませんね。本作も舞台設計が見事。
やはりというか口調は彼の作品らしく、べらんめえ口調で現代の観客にはやや不親切。しかしこれが時代を感じさせて、不思議と美点になっています。
能や衣装もとても優美。日本文化に戯曲を輸入するのは本来困難でしたでしょうに、うまくその作風に日本的景観をつぎはぎしているのだから、流石。
ただ本音を言ってしまうとちょっと残念。
シェイクスピアは言葉運びの妙にこそ素晴らしさがあると思っているので、日本語に無理矢理落としこむと違和感があります。言語も時代も違うのだから仕方のないことではありますが、それでもかの文豪が好きな人間としては引っかかる。
四大悲劇自体の作風も、群雄割拠の時代よりも飽食の時代の方が似合いますし。これは言い出したらキリがない。
完成度は高いのですが、これは存外評価が割れるのではないでしょうか。