垂直落下式サミング

コロンブス 永遠の海の垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

コロンブス 永遠の海(2007年製作の映画)
4.2
マノエル・ド・オリヴェイラ監督作。コロンブス生誕の謎を追って旅をする夫婦を描いたドラマである。
趣味人として幸福な人生をおくってきたと思われる主人公夫婦のラブラブ具合や、ロマンを追い求める旅人たちを見守るポルトガルの国旗をまとった守護天使のさりげないエッチさなどに、何やら強く共感するものがある。
印象に残ったのは、夫婦がドアを開けて車に乗り込むまでを、建物の入り口を開けっぱなしにして内側から定点カメラで撮っているところ。
普通だったらカメラが夫婦の背中を追いかけたり、ドアを閉めるとカットが切り替わるんだろうが、映像に物質的レイヤーが重なることによって彼等の旅の足取りはそれぞれがほんの僅かな一欠片ほどの前進でしかなく、二人にとっては理解の入り口に立つためのひとつの通過点であることが際立つ。
船内で老人と会話する場面で、船室内にいる他の人が、言葉を発している人の方をいちいち向き直して、忙しなく首を振りながら話を聞いている様子が何だかおかしかった。かといって笑いを誘うような間抜けさがあるわけではなくて、この場ではこうすることが聞くものの作法であり当然の礼儀なのだと思わせるような、変な緊張感が立ち込めている。
それにしても、海も空も抜けるようにきれいな青色だ。