jonajona

ザ・セルのjonajonaのネタバレレビュー・内容・結末

ザ・セル(2000年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

夢の描写が秀逸。こういうの見たかった。パプリカより以前なんですね。
カット毎の切れ味が鋭くてヒキが強い。
以下記録用です。

○GOOD
現実と夢を行き来する描写の滑らかさ
・ベッドのシーツの凹凸と色味がそのままゆっくりスクロールしていくと砂漠の荒原のなだらかな山になってる。
その山々を歩く小さな白い人影。様々な角度から描写。

・壁まで歩いて振り返るといくと自分の身長が小さくなってたことに気づく。さらに自分の体自体は宙吊りで眠ってる。(いつのまにか夢に入ってた描写)

・夢の中に潜在意識として殺人鬼の幼少期(純真さ)と歪んだ衝動の化身たる変態的で豪華絢爛な神(殺人衝動)、そして現在の自分自身の姿が投影されている。インセプションを見て夢の主人をどう攻略するかという話に衝撃を受けたけど、こちらでは夢の主人は必ずしも1人じゃなくて内面を投影して複数人現れ、互いに支配・作用し合うという設定が衝撃だった。

・殺人鬼の夢の中のカオスすぎる演出。
(主人公が外部から夢に侵略したことを探知して)時計の針が急速に進み、馬が落下する刃でバラバラになり、解体されながらも内臓は動いてる。(刃はガラス箱になり中にバラバラ馬が収められる)

・本能に訴えかける不可思議な映像たち。
馬の解体図に加えて、荘厳な巨大部屋を覆い尽くす殺人鬼神の背中のカーテン。
黒い犬が血が吹き出すバスタブの横で体をスローモーションで振ってる映像。(スロー)

・ストップモーション、スローモーションの効果的な違和感を与える使い方
犬のシーンや、水から神が現れるシーンなどの汚水に変わる瞬間や鱗の不気味さ。

・重力・空間・遠近感の嘘。
クローゼットに入ったはずなのに後ろに歩いていくと別の部屋。地下水道のような部屋から隣を覗くとありえないくらい広大な廃墟。深い谷があり長い階段が両サイドに伸びている(片方の階段には子供が)
水槽から空へ投げ出される形で出たのに落下して宙吊りになる。

・現実での衝動の具現化としての夢。現実と地続きでより壮大な形を表すところ。
現実の犯罪行為と同じく水槽、湖が出てくるが比べ物にならないほど豪華絢爛。

・夢に導入する装置がシンプルかつ独創的で似非科学的に理に適ってる。
肉のひだのようなスーツを着てワイヤーで体中吊るして宙吊りにする。夢の世界の衝動の予感としての肉のひだスーツ。どこかエロスを感じながらも不気味なフォルム。
かつ、宙吊りと催眠状態に関するロジックは阿部和重氏の小説『ピストルズ』でも見られて、身体の浮遊感が一種のトリップ状態へ導入するってのはかなり説得力ある。

・インセプションでいう所のトーテム的な夢内での相手への感情伝達装置としてのアイテム。殺人鬼幼少時代の子供に助けが欲しければ呼んでと渡す光るブローチ。次に夢に入った時にも少年が持ってることで心の交流が図れてる事がわかる。

・殺人鬼の倒し方がいい。過去の洗礼入水時のトラウマを利用して子供を水につけさせることで神が死ぬ。浄化されてる感じも同時に出て素晴らしい演出。

・夢ではなく現実だと認識したら本当に死んでしまうという設定。

○bad
ラストのアクションシーンが少しシュールコメディ的な雰囲気になってしまってる。
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