KenzOasis

イントゥ・ザ・ワイルドのKenzOasisのネタバレレビュー・内容・結末

イントゥ・ザ・ワイルド(2007年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

「許せるようになった時、愛せる」

大学を卒業後すぐに家を飛び出し、家族に何の連絡もせずに放浪を続け、アラスカを目指した青年クリスの話。

「幸せは分かち合うことができた時、はじめて現実になる」自由で孤独で、苦しくも刺激的な放浪の旅を経て、自分の最期を目前にクリスはそう書き残した。その言葉は様々な経験をした彼が自分でたどり着いた真理なのだが、観客にとっても真理として受け取らせてくれる映画だった。

アラスカでの彼の終着点であるバスでの時間からはじまって、大学を優秀な成績で卒業した祝いの席で車を買ってあげようと両親に言われたことに「物、物、物。うんざりだ」と告げ、放浪の旅に飛び出す。この時の彼はただただ、自由に憧れた愚かな青年にしか見えないのだが、旅の途中で出会った人々と交流する姿が、その時口にする自信と希望に満ちた言葉が、彼の人柄を生き生きと映し出す。

原作を読むのも楽しみにしている。その原作を読んでたちまち魅了されたショーン・ペンが、遺族からOKが出るまで実際に製作に入るまで10年待ち、自ら監督・脚本を務めたというだけあって、すべてのシーンに敬愛に満ちた視点を感じた。

主演のエミール・ハーシュも知的な目と豊かな表情をもって見事に演じていて、交流した人々が彼を好きになる気持ちを擬似体験させてくれたと思う。

社会から離れたがったように見えて離れきれていなかった旅は、愚かだろうか。違うと思う。結末からそう感じてしまいそうだけど、旅は彼にとっての適切な社会との関わり方や、幸福を明確にしただけだ。
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