一人旅

タイガーランドの一人旅のレビュー・感想・評価

タイガーランド(2000年製作の映画)
4.0
ジョエル・シューマカー監督作。

戦地ベトナムへの出征直前の最終訓練に参加した新兵たちの苦悩と闘いを描いたドラマ。

エンタメ映画のヒットメイカー:ジョエル・シューマカー監督がベトナム戦争を題材に描いた“厭戦ドラマ”の佳作で、戦争が泥沼化した1971年のアメリカを舞台に、出征前の最終訓練への参加を命じられた新兵:ボズを主人公にして、新兵たちを待ち受ける過酷な訓練の実態と、“除隊”を目標にあえて上官に反抗的態度を取り続ける主人公の勇姿と末路を、色彩を抑えた70年代風のざらつきのある映像の中に描き出しています。

いわゆる“ベトナム厭戦物”に数えられる一作ですが、本作の場合、物語の舞台は現地ベトナムではなくアメリカ国内の訓練地です。そこで主人公を含めた新兵たちは高圧的な上官による指導の下で日々過酷な訓練をこなしていきます。大半の新兵が戦地への出征を覚悟している中、主人公だけは除隊を諦めず上官に対して反抗的言動を繰り返すのです。しかし、そうした主人公のやり方に反感を覚える新兵も存在し、両者の間で衝突が起こります。たとえアメリカ人同士であっても戦争に対する向き合い方の違いが爭いを生み、やがてエスカレートしてゆく怒りと憎しみが当事者を狂気の淵へと追いやるのです。ですから舞台こそベトナムではなくアメリカですが、戦争の狂気に対するアプローチは名作『プラトーン』を踏襲しています。戦争の狂気は実際に戦場に駆り出される以前の段階から既に兵士の心を深く蝕んでゆくのです。

主演はコリン・ファレル。戦争に巻き込まれながらも理性と他者への優しさ、そして何より“命の尊さ”を誰よりも理解する主人公を熱演しています。本作は彼の出世作となりました。
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