『ミッドナイト・エクスプレス』に続けてジェフ・ニコルス監督の作品。期待にたがわない名作。それから「ジェシカ・チャスティン出演作に間違いなし」の法則も続いている。
惜しむらくはポスター。特殊効果バリバリのスペクタクル映画を期待しちゃうじゃんか。そうじゃない。嵐が吹き荒れ始めるのは、あくまでもイマジネーションの中というのがポイント。そのイマジネーションがリアリティーと交錯してゆくのがサスペンスなのだけど、じつのところラブストーリーでもでもある。
冒頭のおおきな木のショットがよい。葉っぱの一枚いちまいに演技させるショット。空のショットがよい。青く広がる空に白い雲が表情をつける。落ち着いたカメラワークがよい。だからこそ、とびっきりのホラー映画なみの効果が生まれる。
そして主演のふたり。この映画で数々の賞を受賞したマイケル・シャノンは、無骨だけど壊れやすく荒々しくも優しい男(どこかパゾリーニに似てないかな?)、その狂気と正気の狭間をかくもリアルに演じて見事。相手役のジェシカ・チャスティンが、隣に住んでいてもおかしくない主婦を、まるで初めからそこにいたかのような自然さで立ち上げる。そして、このふたりが壊しそうになりながらも、なんとか壊さないように崩れ落ちる砂をすくい上げる砂の城、あの耳の聞こえないお姫様の住んでいるお城こそが、この映画のほんとうの主役なんだろうな。
それにしても、良い映画の作り手の作る映画はやっぱりラストがよい。びっくりするのはオープニングとエンディングがくるりと回って繋がるイメージ。その円環をけっして閉じない脚本がよいから、映画はきちんと終わるのに、物語の余韻は続いてゆくんだよね。
これ、おすすめです。