「その日は恐ろしく暑かった」のナレーションで始まるこの映画。
とにかくうだるような東京の夏の暑さの描写が目を引く。
この映画の翌年の昭和24年の東京の8月の気温をしらべてみたら、平均26.2℃とある。なんだ、今の異常気象による酷暑と比較したら大したことないと思うのだが、エアコンも無いし扇風機も各部屋に備え付けられていたとも思えない貧乏な時代なわけだから、体感的にはそうとう暑く感じていたのではないか?
三船敏郎演じる若い村上刑事がバスでピストルをすられるオープニングから全く構成に隙のない語り口。
実際に東京の闇市を助監督の本多猪四郎氏が隠し撮りしたロケーション効果も去ることながら、河村黎吉や千石規子ら脇役陣の充実ぶりが素晴らしい。
再見してみて改めて傑作と感じると共に、後の映画への影響を与えたとゆう意味でも黒澤映画の中でも欠かせない作品である。
同じ復員兵でありながら善と悪の道に別れた刑事と犯人とゆう設定は後の【リーサルウェポン】にも見て取れるし、何より後楽園球場の場面を【リーサルウェポン3】のアイスホッケー場の場面でオマージュしている。
クライマックスの足元の泥で犯人を見分ける場面はスピルバーグ監督が【激突】で丸パクリしたのはご存知の通り。
若き黒澤明の才能、若き三船敏郎の熱演、映画的エキスで満たされた刑事アクションの傑作である。