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Q&AのSPNminacoのレビュー・感想・評価

Q&A(1990年製作の映画)
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クイーンズで起きた警官の正当防衛射殺事件の裏には深い闇があった。ティモシー・ハットン演じる若き検事補アルが主人公であるものの、映画は周縁で利用され踏み付けられたマイノリティに力点を置いている。
アイルランド系、イタリア系、プエルトリコ系、ユダヤ系、黒人、そしてトランスジェンダー。取り調べでは差別語が飛び交い、腕利きとして重宝される容疑者刑事はあからさまにレイシスト。黒人刑事を懐柔するやり取りがかなりえげつない…。1990年作だが今現在問題になっている警察権力の犯罪そのままだ。そして正義感に燃えるアルでさえ、無自覚に差別心を抱いていた事実と直面する。差別を下地にお互いの緊張関係が絡み合い、それはより弱い立場を追い詰めるのだった。
Q&Aとは供述調書を指す言葉だが、Qはアルを指名した検事クイン、Aはアルのことでもあり、最終的に2人が裏表だとわかる。ニック・ノルティが卑劣なレイシスト警官をこれでもかと憎々しく演じてるけど、彼もまた所詮捨て駒。何もかも闇に葬られ(おかげで現在でも変わってない)根本的な差別システムが維持されていく恐ろしさ。その中で否応なしに加担させられる虚しさ。せめても自分自身の過ちに向き合うことが希望として示されるものの、問いかけ(Q)があっても答え(A)は出ない。
唐突に流れるトンチキな挿入曲が惜しいのだが、さすがシドニー・ルメット監督脚本は硬派で濃厚。要所でアーマンド・アサンテやルイス・ガスマン、チャールズ・ダットン、そしてノルティの長台詞シーンが見応えあり。
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