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リリイ・シュシュのすべてのncccoのレビュー・感想・評価

リリイ・シュシュのすべて(2001年製作の映画)
3.7
何度観てもこの世界に吸い込まれてしまう。

歌姫・リリィシュシュ。
リリィは作中、どこにも姿を現さない虚構そのものでありながら、若者に現実以上のリアルを感じさせ、覚醒させる存在。エーテルという透明な電波に歌声を乗せて。

眩しい緑の中で、立ち尽くし、叫び泣く主人公たち。
校内に響くピアノの音色に、心惑わされ、感じるのはひりひりした痛み。
そう、青春はキラキラしてるんじゃない、ヒリヒリしていたんだ。
脱け出たくて、何かを掴みたくてもがいていた気がするあの頃。
掲示板へのハンドルネームでの書き込みとか、超懐かしい。

カリスマリリィをバーチャルなネット世界で飛翔させる、そこに愛情が、友情が芽生えそれが現実世界に照り返る時、歪みが生じる。この時代独特の空気感は原作によく描かれている。

普遍性を出すために映画ではその部分を強く出さなかったのかもしれないけど、この作品は原作と合わせて読まないと意味が無くて、映画としての完成度だけだとスワロウテイルの方が圧倒的に高い。
けど、だからこそ敢えての空洞感というか、余韻が半端ない。

何というか、上手く言えませんがこれから先もずっと私の大切な一本として特別な位置にあり続けるだろう作品。
たまに引きずり出して、溺れたい。
リリィに何を求めているのかは、今でもよく分からないけれど。
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