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ハッピーアワーのncccoのレビュー・感想・評価

ハッピーアワー(2015年製作の映画)
3.8
こんな感情の波に揉まれることが日常生活にあるだろうかというような、豊潤な感情体験。最初から最後まで、息つぐ間もなく色んなキャラクターの色んな感情がわたしたちに降り注いできて、感情の波にのまれ続ける。

芙美、あかり、桜子、純。
4人の女性たちがそれぞれの人生とそれぞれの幸せに揺れる。初めて観た時は、何でもズバズバ言ってしまうあかりに一番似ているかもと思ったけど、何回か観ていたら芙美に一番近いのかもしれないと思った。肝心なことは何もうまく言えなくて抱え込んで、そのうちに一番大切なものを失ってしまう。なんだか身につまされた。

そして、改めて純のキャラクターに惚れ惚れ。この映画の醍醐味は、なんといっても純の離婚裁判のシーンだと思うけれど、ここのセリフひとことひとことがグサグサと心に刺さって痛かった。
離婚するために旦那の過失について、与えてもらえなかった色々なものについて滔々と語り続ける純のことばに見え隠れするほんとうの彼女のひたむきさと強さにただただ打たれる。そして、その言葉を受けて旦那も再度彼女を取り戻したいと願う。
「離婚裁判は、ぼくと純の結婚生活の中で最も濃密な愛のやり取りでした。裁判を通して純の聡明さと愛情深さと美しさに出会った。僕は、純に恋をしたんです。」旦那が後になってこんなことを言うんだが、早く気づけやと思うと同時に、同じ時期に同じ気持ちを共有することの難しさを思ってみたり。

いろんなことを感じ考えながら過ぎていったあっという間の5時間17分の濃密さと尊さについて、電車に揺られながらじんわりと考え余韻に浸った帰り道のあの時間は、文字通りのハッピーアワーでした。観る人それぞれに響く「しあわせ」があればいいなと願いながら。
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