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パプリカのncccoのレビュー・感想・評価

パプリカ(2006年製作の映画)
3.6
虚構の夢の世界に現実が呑まれていく。平沢進のビートに乗ってめくるめく繰り広げられる夢の女パプリカのサイコスリラーアクション。
今敏らしいシームレスでスピード感溢れる美しいアニメーションは、開始3分で観るものを豊饒な喜びの渦へと巻きこんでくれる。

あでやかで騒々しい今敏版百鬼夜行絵巻に、繰り返し反復される夢のシークエンス、名映画へのオマージュシーン。
内なる人格、もう一人の自分パプリカが本来の自分千葉敦子と一体となるとき、彼女の愛の力が世界を救い、もう一人の自分を見出した粉川はトラウマを克服、青空が戻り平和な世界が取り戻される。
ラストの乾の自意識の暴発と都市での闘いはアラジンやナウシカやエヴァンゲリオンを全部詰め込んだようなカオスっぷり、対する敦ちゃんはどこかしら会田誠が描く少女を彷彿とさせて、オタク力全開、サブカル万歳で観れるところも面白いところ。

密度の高いキャラクター背景とどうしても無理のある後半のストーリー展開は、原作を読んだ後なら吸収できるところが多々あり、原作と合わせて鑑賞することでようやく完成するという点では「リリィシュシュ」と同系統の作品かもしれない。それは、筒井康隆と今敏という二人の才能が響き合って生まれた壮大な世界観。ふたりの共鳴度の高さ、不思議なシンパシーは原作を読むとお判りいただけるはず、未読の方は是非体験を。

原作においても客観的にパプリカの世界を眺め、時に助け船を出す「ラジオ・クラブ」の玖珂・陣内のコンビをアニメでは筒井と今がカメオ出演で演じている。役柄とも合わさって現実でも二人がこの世界を作り出し時に支える、その入れ子構造が面白い。

ここまでくればあなたも立派なパプリカ中毒、極上のスパイスを味わってしまったら後戻りは不可避。世にも奇妙な夢の世界へ、ようこそ。
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