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真夜中のカーボーイのHIROのレビュー・感想・評価

真夜中のカーボーイ(1969年製作の映画)
4.0
アメリカンドリームを夢見てテキサスからニューヨークにやって来たジョン・ボイト演じるジョー。しかし、現実は厳しく、孤独感さいなまれる中でダスティン・ホフマン演じるラッツォという男に出会う。彼もまたマイアミに行く夢があった。奇妙な友情が芽生えた2人が共に大都会の底辺から這い上がろうとするお話。

アカデミー賞作品賞を受賞したアメリカンニューシネマの傑作。

ジョーはアメリカンドリームを夢見ていた。
男性的魅力で女を引っ掛けて金を要求するも逆に金をふんだくられてしまう。現実はそんなに甘くないということを知ってしまう。
これはまさに、理想的なアメリカが実は腐敗していたということを表しているんだと思う。上品で理想的なイメージがあった中流階級の人々も実は見せかけでしかなくて、ただの汚い連中だった。
普通に働けば底辺から抜け出せたかもしれないけど、それはジョーの夢見ていたものとは違う。それはアメリカの腐敗した社会に取り込まれてしまうような気がしたのかもしれない。

足を引きずり、肺を患っているラッツォ。彼はマイアミに行く夢がある。彼の妄想の中で、海岸沿いを走り回っている姿があった。このシーンはとても切なかった。
叶うはずのない夢を見ているようで...。

夢を見て必死にもがいている若者はたくさんいる。その中で底辺から這い上がれる者はどのくらいいるのだろう?
結局ジョーとラッツォのように体制に叩き潰される者がほとんどなのではないか。
ラストは恐ろしいくらいに残酷で切なかった。

夢を諦めて現実的に暮らす方が幸せなのか?
叶わなくても夢を見て生きる方が幸せなのか?
実際は夢を諦めている人の方が多いと思う。理想と現実は違うから。現実に叩きのめされることの方が圧倒的に多いから。

この映画を見終わった後はやるせない気持ちでいっぱいになった。
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