さわだにわか

秘境のさわだにわかのレビュー・感想・評価

秘境(1949年製作の映画)
3.7
シネマヴェーラのアイダ・ルピノ特集でアルドリッチの『悪徳』と続けて観たのだが会話劇が基本的に苦手というのもあり意外や無名作と思われるこちら『秘境』の方が楽しめてしまった。舞台の名前が「迷信山」なんてぐらいだからユーモラスなトーンではあるが、祖父から相続した山に埋蔵金を探しにやってくる青年のモノローグで進行し途中からは祖父の裏の顔が明かされる回想パートになる構成はまさにフィルムノワール、アイダ・ルピノはこの回想パートで若かりし頃の主人公の祖父と一悶着ある人という役柄で出てくる。

フィルムノワールというと映像偏重の作品が多いがこれはシナリオに一捻りあり、現代と回想が徐々に絡み合うミステリアスな展開を見せ、現代パートにはポーの『黄金虫』を思わせる(っていうかパクってる)冒険&謎解き要素もある。回想パートでのダメ夫と成金男(祖父)の間で表情を崩さずに諦観と希望の間で揺れるルピノは演技も人物造形も深みがあって良く、その苦い顛末が現代に暗い影を落とす…という意味ではある種のホラーでもあるのかもしれない。

舞台となる迷信山は大部分ロケだろうが洞穴のところなんかは岩崩れが起こるくらいなのでセットらしい。え、セットにあんま見えなかったぞ。たぶんいろいろ組み合わせてそう見えないよう工夫してるんだろな。美術周りの職人芸もなんだか嬉しい、埋蔵金を探しに行く映画だけに掘り出し物という感じだ。
さわだにわか

さわだにわか