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白と黒のkojikojiのレビュー・感想・評価

白と黒(1963年製作の映画)
4.0
 長年、恩師である宗方弁護士の若き妻・靖江と不倫関係にあった弁護士・浜野(仲代達矢)は、恋人との結婚話をめぐって口論となり、衝動的に靖江を絞殺してしまう。
ところが直後、別の男が犯行を自白し、警察に逮捕される。
死刑廃止論者の宗方弁護士と浜野は、その男の弁護を引き受けることに。捜査を担当したのは、老練な検事・落合(小林桂樹)だった。

 私のフォロワーの一人てつじさんは、この作品を
「これぞサスペンスの醍醐味!」
と評し、
ボブおじさんは
「まさに掘り出し物の一作」と書いている。
どちらも、まさに言い得て妙。
こんなにも緻密でスリリングなサスペンスドラマを今の今まで知らなかったことに、正直驚かされる。
そして――面白い。

 とりわけ、小林桂樹の存在感には圧倒される。
改めて、彼がどれほど優れた俳優であったかを実感するし、こういう“魅力のある役者”は、今ではもうなかなか見かけない。

 それに忘れてはいけない西村晃。水戸黄門様、悪い奴ほどよく眠るで縮み上がった課長さん役を演じた彼のしっかりした演技力に感心した。

 脚本は橋本忍、監督は堀川弘通、音楽は武満徹――どこをとっても一流の布陣。
ちなみに、堀川監督と小林桂樹のコンビは、1959年に東宝作品『黒い画集 あるサラリーマンの証言』という傑作も世に送り出している。

 ところで、このドラマに既視感を覚える人もいるかもしれない。
実は私も、つい最近観たクリント・イーストウッド監督の『陪審員2番』を思い出した。
両作は、驚くほどテーマが近い。
『陪審員2番』が“正義”に揺れる物語なら、本作は“良心”に引き裂かれるドラマだ。
ただ、どんでん返しの鮮やかさはこちらの方が上。
総じて、作品としての完成度もこちらに軍配が上がるように思う。
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