Bellissima

消えたシモン・ヴェルネールのBellissimaのレビュー・感想・評価

4.0
『消えたシモン・ヴェルネール』@ユーロスペース

一人の高校生男子の失踪、そして一人また一人と次々と消えていく同級生。青春映画をフォーマットに事件前後を複数視点で見せる謎解き構成。各人物の現在地を鑑賞者の頭に俯瞰図で描かせる繰り返し効果が絶大でスリリングな体験。

冒頭 暗い夜道を早足でパーティー会場へと向う女性に忍び寄る不穏な空気に被さる小気味いいビートが全体のスピード感を強めており本作テンポを決定づける。

「桐島、部活やめるってよ」の様に物語の集約に向って矢継ぎ早に提示するテンポの早い演出には近いものがあるのに人物や所属グループに自分を当て嵌め感情移入させていく部分は希薄であえてそうしているのでしょう極めてフラット。そこが返って冷静に諦観出来て妙なフレッシュ感あり。

若さ特有の身勝手さ、現実の痛みと対峙するざらついた感情による行動がソニック・ユースの演奏と連動、微妙に変化する人間関係を青い性の立ち込める匂いで裏打ち。この手の作品は作中の人物の意図より作家の演出意図の方が前に出て策に溺れるケースになりがちですがそこは微妙なバランスで切り抜けてます。緻密さに欠ける部分はあれどそんな事はどーでもよくなる位に作風は凄く好ましい作品でした。いやいやお見事です。面白かった!!
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