Bellissima

FORMAのBellissimaのレビュー・感想・評価

FORMA(2013年製作の映画)
4.5
『FORMA』@ユーロスペース

こわい こわい こわい、えっ、なになに えっ、えっ、あっ、こわい こわい やだっ、なになに えっ こわい こわい こわいよー やだ やだ やだ やだっ えーっ ー ー ー ぐったり すごい えいが みた

憎悪の内圧を抑える事の出来ない心の荒み。極限値に近ずく事によって繋がれた関係性が秩序の亀裂を告知する。事情や背景、明かされてく真実。暗雲から撒き散らかされる「悪意」が鑑賞者をも浸食し倫理観を著しく掻き乱す。妥協を拒む冷厳なリアリズム微塵の揺るぎもない145分。戦慄!

人間関係奥底に横たわる整理のつけようのない負のエネルギーにしてやられ。愚かしさと哀しさが重く切ないもの透かし見せ。灰色空気まとった人物の背景を会話から幾重にも浮かばせては日常の陰影を炙り出す。鋭い人間洞察深く繊細な演出をそこかしこに潜ませる坂本あゆみ監督 恐ろしや

それぞれが抱えた孤独や不通の現実、不穏な階層が重なってゆくうちに生身の人間たちが見たこともない極限エモーショナルな情景を放り出す。傷の共有も痛みの共感も拒絶するワンシーンに注ぎこまれた演出の情念がただ事でなく人間暗部を覗きたいという歪んだ好奇心が前のめりになっていく

終盤クライマックス刺々しい場面で(多分ですが)あまりのいたたまれなさに退場する方がいました。これすごくわかる。呼吸が苦しくなり心拍数が高まって出来る事なら私もその場から逃げ出したかった。でも、身動きができなくなっていた。この映画を見た誰もが目撃者であり証言者でもある

劇中音楽は一切使われていない。音楽で人の心の動きを補完したりしない引き算がなされている。これは作品全体にいえることで引く事で強度が増す素材の活かし方を心得ている。力技や技巧に傾斜しない覚悟や認識、勇気や沈着を感じる。この監督の愚直なまでの真摯な姿勢にぞくぞくした。
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