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消えたシモン・ヴェルネールのakrutmのレビュー・感想・評価

4.0
男子学生シモン・ヴェルネールの失踪の謎が、彼の同級生5人の、そして最後はシモンの、視点からそれぞれ描かれることで、徐々に明らかになっていくという青春ミステリー。その過程において、高校生たちが見聞する様々な噂話やゴシップが浮かび上がり、他に失踪する学生まで現れ、謎の解明は必ずしも単調に収束していくわけではない。それだけに、映画の最後で謎が解き明かされたときには、その平凡さにがっかりするかもしれない。

しかし、本作は謎解きを楽しむミステリー映画という側面だけではなく、いかに人間(特に、思春期の若者たち)の思考や行動が不確実な情報に影響されるかを描いているとも言える。それにしても、この映画を見ていると、人間は噂話やゴシップに好きで、それらの情報にいとも簡単に振り回されるかがわかる。進化心理学者のロビン・ダンバーは、人間が進化の過程でことばを話すようになったのは、他人に情報を伝えるためではなく、噂話をするためであるという仮説を唱えているが、まさに人間とはそういう生き物なのである。噂好きの人類は、噂によって真実から遠ざけられ、噂そのものを真実のように思ってしまうという不条理さを感じられずにはいられない。
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