上映時間227分、ほぼ4時間(インド映画より長い!)という大長編歴史スペクタクル。
観たのはだいぶ前の東宝【午前10時の映画館】でしたが、午前10時に始まっても終わったのは午後2時。ちょっとした旅行気分が味わえました。
30年ほど前にもリバイバル上映があって観てるはずなのに、まったくといっていいほど内容を覚えてなくて(近代史にも疎かったし、そんなに興味なかったんでしょうね)。
もっと昔、テレビの洋画劇場で見た時はロレンス役のピーター・オトゥールよりもアラブ戦士オマー・シャリフが大そうな美男子だ、と子ども心にときめいた記憶があります。
十分大人になって観た「アラビアのロレンス」は、上映時間同様スケールも大きく本当に贅沢な大作でした。
オマー・シャリフは記憶と変わらずハンサムでしたが、彼が扮するアリも観客の私もピーター・オトゥール演じるロレンス少佐の複雑怪奇な内面に終始翻弄されっぱなし。
軍人として機知に富んだ策略家であり、繊細な詩人であり、また時に男色家を匂わせてみたり。そしてアラブのため命を投げ出すかと思えば狂気の殺戮に手を染める…といった具合でとにかく常人とはケタ違いのメンタルの持ち主なのです。よく言うナントカは紙一重といった感じでしょうか。
そんな奇人ロレンスなのにピーター・オトゥールが知的で美しい憂い顔で静かに佇んでみせるとその人物像にすっかり納得してしまう、というマジックが!
当時無名の俳優だったそうですが、まさにロレンスを演じるために役者になったようなお方。
昔の映画なので砂漠の大ロケは当然ノーCG、ノー特撮。
圧倒的な自然の中では一個人の狂気などとるに足らないものなのか、終盤でアンソニー・クイン扮するベドウィンの首長が言う「アラブに生まれるという事は苦しんで生きろという事だ」が胸にせまります。
1962年公開なので60年近く昔の作品ですが、異民族への憧れやロマン、尊敬などが画面からも感じられ、最近の映画とはやはり趣が違うなぁと感心しました。
それも長年異民族を植民地支配していた宗主国イギリスの映画なんですよね。
ちなみにこの映画、女性は殆ど出てきません。ほんと死体役くらいかな。
男同士の擬似恋愛めいた感情や少年愛など、ほんのりと同性愛が描かれた映画としても王道をいく名作で、故淀川長治先生の一番のお気に入りでもありました。