イニシェリン島の精霊のぶりりんのネタバレレビュー・内容・結末

悲しい。ただただ悲しい。
内戦のメタファーなら余計に救いがない。

ある日突然友人から下された絶縁宣言。気のいいパードリックは傷つきうろたえ、なんとか修復を試みるが関係は悪化の一途をたどる。
常軌を逸した事態に耐えられなくなった妹シボーンは島から逃れ、可愛がってたロバのジェニーは無垢な好奇心から事故で亡くなってしまう。絶望感に最も影響を受けたのは知恵遅れの青年で、片思いのシボーンが去った後冷たい湖で見つかる。
そして愚鈍で優しいパードリックはついにいなくなってしまった。

逃げ場のない小さな集落で自分の生き方を貫くのは難しい。それは自分や誰かを傷つける覚悟がないと出来ない。私だって田舎暮らしは絶対ムリ。小さな島なら2時間が限界だ、たぶん。だからコリンの気持ちも分からなくもない。
それでもやっぱり彼は浅はかだ。優れた音楽や詩は時を超えて輝き続けるが、そもそも優しさのない世界で芸術は生き残れない。それに音楽に没頭しなかったのは他人のせいじゃない。
無くした指や善良さの消えたパードリックを見て、コリンは取り返しのつかない絶望に気づいただろうか。

スリービルボードも素晴らしかったけど、今回はさらにシンプルに研ぎ澄まされた印象を受けました。自分だったらアカデミー賞はこの作品に捧げたい。なんならブリデミー賞を…いらんか。