なんだそりゃ〜⁈肩透かしなエンディング。
主人公が危機を強運でいきのびるのは、まぁ良いとしても。
ストーリーはないに等しい。
地球が異星人に襲撃され人類が虐殺されるも、結果撤収でエンド。
主人公の成長がテーマでも新たな人生の門出でも社会派ドラマでもない。
宇宙人の戦闘機(トライポッド)には既視感があったが、そもそも原作者H.G.ウエルズのアイディアを踏襲しているので当然だった。
前半はカメラワークや町の崩壊など見せ場が多く惹きつけられた。懐かしの怪獣映画のようだわ、とも思った。
そしてだんだんと、ホラーなのか、いや実はコメディーなのかもとさえ思ったが全部ハズレ。
戦争映画でももちろんない。歯が立たないので戦いにならないから。侵略理由の説明も伏線も何もなしで置いていかれてる感この上なし。
ダコタちゃんの真剣さとトムの動揺っぷりが見事なのでそこは面白かったけど、主人公が活躍しなさ過ぎてスッキリしない。
冒頭で、主人公の重機を扱うテクニックが披露されるのできっとこの技術が後半で活かされるのだと信じた私。甘かった。
ママたち一同は何故無傷なのか、息子のロビーはなぜここに居る?
ただ宇宙人の侵攻に巻き込まれた運の悪い人々の中で飛びきり運の良かった人のお話しですね。
何故か大阪で奴らが倒された話が出てくる。弱点はあるはずだと。しかし後のストーリーには反映されず、ただのネタだった。
スピルバーグ監督はこのことを聞かれたときこのように答えていたという。
「大阪が倒せた理由? そんなの、日本人はアニメやオモチャでロボットに詳しいからに決まってるじゃないか!」
「大阪はガメラをはじめ、いろいろな日本のモンスターを倒している経験豊富な場所だ」
(爆)どうもありがとう。スピルバーグさん。
「宇宙戦争」は映画は1953年公開。原作は1898年の小説。
作者は「タイム・マシーン」を書いたH・G・ウェルズ。100年以上昔のSFで古典中の古典。
ああ。ほらほら、1938年に、オーソン・ウエルズが、ラジオ・ドラマ劇として放送したら、現実だと思った人が多出したといわれる有名な騒動ってのが、この小説のことです。
映画化としてはリメイクだし、スピンオフや影響を受けた作品は数知れず。
娘がもろエヴァゲに似ていると言っていた。
トライポッドは1906年時点にコレアというイラストレーターによって挿絵用のイラストとして描かれている。ウエルズと相談の上で描かれたというこのトライポッドの絵は有名で、以後100年以上このデザインをベースにアレンジされている訳。マスターピースどころの話ではない。もはやインプリンティングのレベル。
エヴァゲに限らず、宇宙人と戦争になる話は全部ウエルズがルーツって事
ウエルズさん。本当にSFの父なんですね。
なぜスピルバーグが「宇宙戦争」をリメイクしたのか?
宇宙人は「人智をはるかに凌ぐ」知的生命体でじっくり時間をかけて「地球を観察し」地球をわがものにすべく人類を駆除しようとする。こんな設定にしてはあまりにもお粗末な理由で侵略に失敗するのだが。
今どき映画でこのオチはないでしょう。
コロナウィルスに散々悩んでいる今の人類なら、この誤ちの愚かさは信じられないレベル
それまですごく強そうだったのにガックリ。
ウエルズの時代は人々は馬車に乗り、宇宙人への攻撃も「大砲」レベルだったので、こんな平和な幕切れでも、ああよかったでいいだろう。(人間力で退治できる訳がない)
原作は大航海時代のヨーロッパ列強による植民地化の歴史をSFに置き換え風刺したのだとも考えられている。インカ帝国が滅んだのも病原菌が原因だと言われている。
鋭い指摘だったのだ。100年前なら…
しかしこれをまんま映画のオチになぜしたんだ?
私の想像では、この歴史に残る古典SFの映画の最高峰を自分こそが作ってみせよう、という野望だったのでは?お金のかけ方も半端ではないらしい。
スピルバーグは心の底からSFが好きなんだ!と確信した。自分が長年愛した世界が大切なんだね。きっと映画として大衆にウケる事以上に。